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いつもなら今から私はお酒を呑んで、ダラダラと喋る私の話を健一朗に聞き流してもらう時間が始まるのだけれど。今日はもう布団に入って健一朗にくっついていたい気分。
『今日はもう布団入ろうよ』
｢お、珍しいやん｣
『健一朗に嫌われるまでくっつく時間の始まりだからね』
｢すんなり寝ぇや｣
私が先にベッドに入ると、隣に潜り込んでくる彼。二人ではやっぱりこのベッドは狭いけど、普段はこんなにベタベタさせて貰えないから私はこのベッドが気に入っている。
『明日、会社休もうかな』
｢アカンて｣
『んんんん、分かってるけどさぁ』
そう言いながら健一朗の体に手を回すと、回した手を握ってくれる。抱き締め返すとかじゃない辺りが健一朗らしくて好きだ。
『健一朗とベッド入るとすぐ眠くなるから嫌だ』
｢じゃあ俺床で寝よか？｣
『それはもっと嫌だ』
もっと喋っていたいのに、健一朗に手を握られている安心感からかすぐに眠くなってしまう。
『もう眠い、おやすみ』
｢おやすみ｣
．
カーテンを閉め忘れた窓から直接眩しい光が差し込んで、あぁまた今日も仕事だと少し憂鬱になる。隣でまだ寝ている彼はまだ仕事まで時間があるはずだから、起こさないように立とうとするとモゾモゾと動き出す彼。
｢…ん、おはよう｣
『ごめん、起こした？』
｢いや、全然｣
二人とも朝は得意じゃないから口数は少ないけれど、朝ご飯を食べるほど時間に余裕がないことに気がついて私が歯を磨き始めると彼も一緒に磨きだす。
『だぁぁあ化粧しなきゃ』
いつも私が化粧している姿を凝視してくるのは正直緊張してしまうので辞めていただきたい。
『お、間に合いそう』
準備を終えてリビングに戻ると、何故か彼も着替えていた。
『何か用事あるの？』
｢いや、何も｣
何を考えているかよく分からない彼を置いて玄関に向かうと、彼も一緒に靴を履き始める。
｢…徘徊のついでやから｣
さっきまで憂鬱だった朝も、彼らしい思いやりで楽しいお散歩デートになってしまう。
『ありがと、行こ！』
彼の手を取り、部屋を出る。
いってらっしゃいとか、おかえりを言う相手がいる。その相手がこんなにも愛おしい存在なのだから私は本当に幸せだ。
(たまには、Aも徘徊着いてきたらええやん)
(徘徊デート、いいね)
(それってデートなんかな)
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作者名：L | 作成日時：2022年5月4日 0時
