Laundry. (ページ24)

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『おっ、こたつや！』

久しぶりにお邪魔する平井くんの家には1年振りの再会となるこたつがあって、電源を入れろという圧を込めて平井くんを眺める。

「そんな睨まんでも、つけるから」

『うわ〜、ええな。こたつ買おかな』

こたつのために平井くんの家に入り浸るのも悪くないな、なんて企んでいたら後ろから聞こえた申し訳なさそうな声。

「うわ、ごめん。普通に冷蔵庫なんもなかったわ」

『…ようそれで家に招いたな、私を』

「ごめんて、ちょっと買ってくるわ」

『いやいや、私も行くて』

「え、寒いから待っててええで？」

『え〜、一人で待ってる方が寂しくて嫌やない？』

そう言うと諦めたのかなんなのか、ぶっきらぼうに“行くで”とだけ言ってそそくさと玄関に向かう平井くん。急いで立ち上がって私も外に出る。

『いくらなんでも寒すぎる、おかしい』

「なんもおかしないやろ、ただの冬や」

少し歩いたところにある、私の家と平井くんの家の丁度真ん中らへんのコンビニ。

「それでは、ちょっと贅沢させていただきます」

夜中まで売れ残っている小さい刺身の盛り合わせを2パック。ちょっとした贅沢。

『お、もしかして？平井くんの奢りだったり？？』

「今度はAの奢りやからな」

なんて言いながらレジに1人で向かう彼を、コンビニを出て外で待つ。いくら何でも寒すぎる、平井くんはよ出てこい、と心の中で訴える。

「うわ、寒っ」

『遅いって、はよ帰るで』

早くこたつに入りたい、その一心で歩き出す。

『…平井くん？どうした？』

明らかにコンビニに来た時よりも狭くなった歩幅に、違和感を覚えて声をかける。でも返事は、“いや、その…”なんて曖昧なものばかりで、立ち止まっているのもなんだからとりあえず歩き出す。

すると、急に歩き始めた平井くんの左手が、私の右手を掴んだ。お互いに冷えきっていて温もりなんて感じないけれど、確かに繋がれているその手に、私はただただ引っ張られていた。

男の人と手を繋いだことがないわけではない。
でも、今この繋がれている手は決して私の心を浮つかせるものではなかった。むしろ、言葉が何も出てこなくなるくらいには緊張してしまっている。

付き合いたいとか、恋愛的なことを平井くんに期待しているわけではないはずなのに。それなのに、その手を離してほしくないと思っている自分が、確かにいた。