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こういう時、謎のプライドが働いてしまうところも辻さんの好きなところ。辻さんが素直じゃない時は、私がとことん素直になることが効果的だと最近学んだ。



『…私は妬きましたけどね、スタッフさんに』



そう言うと目を見張って私の方を見る彼。




『そんなに驚かなくても』



「いや、なんか、ええなぁって」



『え?』



「可愛ええなって、そういうとこ」




どうしてこうも辻さんは私を喜ばせる言葉をたくさんくれるのか。




『そういうの、他の人には言わんといてくださいね』



「そういうのってなんや」



『…もう!これだから天性のモテ男は!』



「意味わからんわ。ほら、もう行くで」



『ヤダ、戻りたくない』




私がそう言うと、笑いながら私の腕をまあまあ強めに引っ張ってくる。




『今戻ったらなんか劇場でニヤケちゃいそうです』



「ええやん、見せつけたったら」





劇場まで戻る私たちの間に吹き抜ける春風は、さっきよりも爽やかに感じる。もう少し2人でいたいな、なんていう私の望みは叶うこともなく直ぐに楽屋に着いてしまった。



でも、いつもと違うのが辻さんとの距離が異常に近いこと。大きい方のソファに座った私にピッタリとくっついて座ってくる。




『…辻さん?』



「ん?」



『近くないですか?』



「ええやん」



『いやいや、バレますってこれは』



「バレてええやん」



『え!?』




思ったよりも大きな声が出てしまい、楽屋にいる芸人の注目を少し集めてしまった。慌てて離れようとするとガッチリ腰をホールドされる。




「あれ、なんかイチャついてます?」



『うるさい、kento fukaya』



「だからフルネームやめろって」




健人のおかげで辻さんが嫉妬してるところを見れたことに心の中で感謝していると健人が話し始める。




「なんでそんなに密なんすか」



「あぁ、付き合ってるからな俺ら」



「…え!?」



『…え!?!?辻さん!?』



「そうだったの!?A」





健人の大きい声のせいで楽屋にいた芸人がわらわらと集まってくる。





「こいつ、俺の彼女やから。盗らんといてな」



『いや、そんな私の事なんて誰も盗りませんて…』





あまりにも突然の出来事すぎてツッコミを入れようにも声が上手く出ない。

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作者名:L | 作成日時:2022年5月4日 0時

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