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あいつの手は冷たい。凍りつきそうなほど。冷たくて、冷たくて、温めてやりたくて。握っていると俺の体温があいつに移ったらしい。
「あったかい」
「良かったな」
こちらは冷たいが、あいつが喜ぶのならいいのだ。あいつが喜ぶっていうのは俺も嬉しいことだから。


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トクン、トクンと動いていたそれをリトアニアは見つめた。水の中に入ったそれはハート型の心、とでもいうものだろうか。
東だった頃彼女に託された綺麗なピンク色をした心。それはソ連という入れ物が崩壊してからゆっくりと動きを小さくしていく。なぜ自分に託したのかと問えば、もう心のない彼女は微笑むこともなく必要があったからと答えた。
その心はもう動きをなくして、蒸発しそうに溶けていく。それをリトアニアはぼやけた視界で見つめた。
(ごめんなさい。守ることもできません)
いっそ食べてしまおうか。取り込んで仕舞えばもう、もう誰の手にも渡らない。溶けて小さくなった心はパチンと弾けた。
そして冒頭に戻る。


彼女の声を聞いてリトアニアは泣きたくなった。心がある人の声は暖かくて、陽だまりのようで、優しくて。そして、もう自分は選んでもらえないのかと悲しくて。
ラトビアを恋人かと思うだけの心象があるのだろう。
俺じゃなんでいけないのかな、なんて考えてみる。
ラトビアより背は高いし、仕事もできるし、空気も読めるし。エストニアがいるから目立たないけどそこそこ顔もいい方だし。

どこがダメ?

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作者名:何處 | 作成日時:2016年6月26日 21時

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