全然知らない天使「APH」 (ページ20)

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「あ、あの窓口さん」
私に話しかけてきたのはいわゆるフツメンであった。
「俺、トーリスって言います。昔あなたの心っていうかそういうの預かっていまして……。でもさっきそれがなくなっちゃったんです。前にあなたから、そういうことがあったときはそれを入れてあった瓶だけを返して欲しいって言われていたので返しておきたいんですけど、いいですか？」
「ええ、ありがとうございます？」
ちっとも心当たりがないが、トーリスから渡されたガラスの小瓶はシャンデリアの光を反射して床に綺麗な文様を作った。
「綺麗な形です。何か懐かしいものを思い出すような気がします。……こう、春の訪れみたいな」
その時、私の脳内に暖かい日差しが差し込み、雪の中から芽を出す草の淡い黄緑色を駆け巡った。
「私の記憶……？」
ひどく寒いのにひどく嬉しい、そんな感情も流れ込んだ。
「思い出した！私は寒いところにいたんだ！」

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