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「……僕は一度、酒に逃げちゃったからさ。でもルカくんは決してそんなことはなかった。見習わなきゃね」
「でも、その執念がどうしようもなく自分の重荷になる時は、距離を置くのも間違いじゃないと思うよ」
「…うん」
A君は置いていた撮影機を抱えて一つ溜息を吐く。
長い睫毛が彼の綺麗な瞳を隠すのが見えて、少しだけドキッとした。
「でもそのおかげでアルコールの魔法にかかったんだよね〜。
ほんと、早く治してガッツリ飲みたいよ!」
「禁断症状はどうだい?」
「12時を過ぎても魔法は解けないかな!」
「……健闘を祈るよ」
彼はどうして酒に溺れてしまったのだろうか。
飲まないとやっていけないほどの事があったに違いないけれど。
「初めて会った時はビックリしたよ。門の近くで倒れていたんだから」
ウイスキーの瓶まで散らしてね。
癖の強い人が来たとは思っていたけれど、まさかこんなにも深い付き合いになるとは。
今となっては君のいない荘園など考えられない。私にとっても、他の人にとっても。
「いや〜、あの時はお世話になりました。飲みすぎも考えものだよね本当に」
「説得力が違う」
「……本当はさ、ここに来るつもりなんて無かったんだ。
素面の時に招待状を丸めて捨てるくらいにはね」
「おかげで衣食住にありつけたから、今となっては良しとしてるよ」
「それに、ここに来なければルカくんに出会えなかったからね!」
ウィンクする彼に後悔の色は見られなかった。
嬉しさのあまりハグをしそうになるが、ぐっと堪えてA君を見つめる。
「私も、君と出会えて良かったよ」
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作者名:大二重 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/meernosedona/
作成日時:2021年3月21日 18時