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茜空。
開いたカーテンから夕光と寂寥感が吹いてくる。
スラスラとペンを動かす音だけが聞こえてきて、シーンを変えるのは今だと悟る。
ピントを合わせ、ゆっくりと彼を映し出す。
ルカくんは何かを真剣に書き連ねていて、僕を気に留める様子はない。
フィルムの向こうは、彼しかいない世界だった。
ああでもないこうでもないと、小声で難しい単語が並べられる。
僕には到底 理解できないものばかりだが、彼にとってはそれら全てが友人のようだった。
「ああそうか…これだ!」
「……いや違う。ダメだ合わない」
彼は突如その場で静止する。
「──ああ、
ルカくんは椅子の背もたれに寄りかかって、しばらく天井を見上げていた。
虚無を見つめる瞳、肩からだらんと垂れ下がった腕。
虚空を映す彼は、奇妙な程に絵になった。
僕は暫く撮影した後、機械を下ろした。
「お疲れ様、ルカくん。今までで一番上手く撮れたよ」
「ああ……あまり撮れなかったよね、すまない」
「大丈夫だよ」
「……私、集中力が長続きしないんだ」
「僕も全然ダメだよ?アルコール依存性だし」
「そうじゃなくて」
「後遺症なんだ、爆発事故の」
僕は言葉を失った。
先程の彼の表情。
あれは、そういうことだったのか。
かける言葉が無かった。
否、どんな言葉もかける資格がなかった。
どうして爆発事故なんて……。
見る限り電気を扱うようだし、研究中の事故なのだろうか。でも僕から聞き出すのは無理だ。そんな無神経なことはできない。
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作者名:大二重 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/meernosedona/
作成日時:2021年3月21日 18時