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彼が死んでから、僕は無我夢中で撮影に取り組んだ。
彼の遺作になるのだ、誰にも文句は言わせない。口を挟まれてたまるものか。
気が付けば現場は僕の独壇場になっていた。
「そうして誕生したのが、いま
「……どういうこと?」
「言葉の通りさ」
……ひたすらに突き進んだ僕に残ったのは、後悔だけだった。
「僕はこれを最高傑作だと信じて疑わなかった。
でもそれは、違ったみたいだった。
買い手がつかないフィルム、堕落の一途を辿る生活。劇場公開されることもなく終わった。
恋人は最後まで僕に付き添ってくれたけれど、やがて僕は酒に溺れてしまった」
段々と消沈していく僕を、彼女は酷く悲しそうに見ていた。あの目を忘れることはできない。
「ダメだよね、僕。本当に情けないよね……
彼の遺作を公開することもできなかったのだから」
オリーは脚本を持ったまま眠っていたんだ。
そんなことあるのかと思ったよ。
でもね、実際にそうだったんだ。この目で見たから。
「脚本を抱いて眠るほど楽しみにしていたのに。
彼もきっと、多くの人に見てもらいたかっただろうなあ……」
……彼は世界一の映画人で、誰よりも僕のフィルムを愛してくれていた。
そんな彼の思いに、応えたかったよ。
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作者名:大二重 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/meernosedona/
作成日時:2021年3月21日 18時