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Side Izumi
数年前
「ねぇ、いずみ」
いずみ「なに?」
「お願いがあるの」
いずみ「お願い?」
夕日が差し込む病室。
バドミントンをやっていた現役時代とは見違えるほど痩せ細ったお母さん。
お母さんは弱々しく私の手を握る。
「もしね、もしAに好きな人ができたら…相談に乗ってあげて。それで、Aが悩んでいたらいずみが背中を押してあげて」
いずみ「私が?」
「うん、Aはお父さんと同じで悩みを抱え込んじゃうことがあるから…いずみが、Aのことを助けてあげて」
顔色が悪くても笑顔で言うお母さん。
いずみ「…わかった」
そういえばお母さんは優しく頭を撫でてくれた。
長くない自分の命を、この先の人生を私とAに託したのだ。
この数日後、お母さんは亡くなった。
いずみ「お母さん…」
佐藤「お願い、叶えられたか?」
いずみ「多分、」
石川くんの後ろ姿を見送ると、明は頭を撫でてくれた。
いずみ「あとは、Aと石川くん次第だよ」
*
Side Ishikawa
スマホに送られた住所を頼りに全力で走った。
大学の近く。
こんなに近くにいたのになんで気づかなかったんだ。
石川「A…っ」
怒りというより嬉しさの方が込み上げる。
俺が思っている以上にAが俺のことを好きだということ。
石川「俺だって、Aが思っている以上に好きなんだよ」
そう呟けば自然と頬が緩む。
両思い。
それが分かっただけでも嬉しい。
石川「ここ、か…」
肩で息をしながらあるマンションの前で立ち止まる。
いずみちゃんから渡された鍵を握りしめマンションの中に入った。
そんなに階数のないマンションだから階段を一段ずつ上がっていく。
Aの部屋に近づいてくるのがわかると卒業式の時と同じような緊張感が襲ってきた。
Aの部屋の前に立つ。
石川「……ふぅ、」
もう少しでイタリアに行く。
イタリアに行くまでに言わなかったらもう本当に会えなくなるかもしれない。
だから、今までの気持ちを全部ぶつける。
恐る恐る鍵を鍵穴にさす。
ガチャンと、音がなり開いた。
なんか泥棒みたいな感じだけど、気にしない←
石川「これが、ラストチャンス」
そう呟くと玄関のドアを開けて中にはいった。
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Lal(プロフ) - ハナさん» ありがとうございます!温かく見守っていただけるとありがたいです! (2020年1月29日 9時) (レス) id: 07929e390c (このIDを非表示/違反報告)
ハナ - 続きが気になります! (2020年1月29日 8時) (レス) id: 746f6f9a9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lal | 作成日時:2020年1月28日 22時