54 ページ6
『だが他人と仲間は違うだろう。』
その言葉でハッと目を見開いたのは鬱とシャオロン
なんとなく察した
この二人は他人である私だけでなく、仲間すらも信用することができなくなっていたのだろう
安心し心を許すことができなかったのだろう
以前ショッピを助けたとき、彼は仲間を信じて名前を明かした
しかしこの二人は境遇が違いすぎた
あまりにも心へのダメージが大きすぎたのだ
仲間の言葉を信用できず、ただ自分自身を守るために壁を作った
『私を信じろなど言わない。私もお前たちを信じることはない。
だが、仲間は信じろ。それすらもできなくなったら終わりだ。』
いつのまにか下を向いていた二人
無駄な警戒心を解くことができるかどうかは彼らの心次第
私ができることはもうない
私がしたのはただあの二人が自分自身の行動に対して気づかせるきっかけを与えただけ
境遇は人を変えてしまう
かつては信じていた人でさえも信用できなくなってしまうとはな
もちろん悪いのはこの二人ではない
彼らを取り巻いていた環境、それがひどすぎただけ
でもそれは自分で気づけるはずなのに見ないふりをしていた
それに関してはこいつらが悪い
席を立ち廊下への扉を開ける
振り返って委縮している彼らの方を見てひとりごとのように呟く
『…馬鹿だな。』
足早に食堂を去る
あとは彼らが勝手に解決してくれるだろう
様子を見た感じオスマンや兄さんあたりは気づいていただろうな
まあ確かにあいつらが言うより私が言った方が効果はあるだろうが
部屋に戻ってすぐにベッドに倒れ込む
予想以上の疲労感が体をベッドに沈めてくる
随分お節介になった自分自身を不思議に思う
理由を考えたところで明確な答えは出ない
彼らがかつての私と似ているからだろうか
そう考えて、そうではないなとはっきり答えを出す
彼らにあって私にはないものが多すぎたからだ
体を起こし紅茶を入れ椅子に座る
熱い紅茶を胃に流し込めば、食道から胃のあたりがじんわり暖かくなったのを感じる
とりあえず明日は依頼者のもとへ
依頼報酬としてひとらんらんを要求する
用心棒兼召使として扱われているならさっきの二人よりかはましな状態だろう
彼らの依頼を完遂し、私自身の目的も達成するためにやれることはやらなくてはいけない
グルッペン・フューラーを救い出すための案も練らなければな
まだ熱い残りの紅茶を一気に喉へ流し込んだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 264人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ライ - すごく面白いです！すごく大好きです！主さんのペースでこれからも頑張ってください！ (2022年3月27日 22時) (
レス) @page9 id: 9516bfdddc (このIDを非表示/違反報告)
千菜(プロフ) - 続編おめでとうございます！この作品リメイク前から大好きです！これからも応援しています！！ (2022年3月10日 0時) (レス) @page1 id: 4f425976bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らい | 作成日時：2022年3月9日 23時
