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夜は深まり時計の針は空を指していた
ずっと眠っていた反動か、眠りにつくことは出来ずに仕方ないので散歩をしようと庭に出ていた
随分軽くなった体だが、感覚が鈍っているからまだ本調子ではないらしい
庭にあるベンチに腰掛けて一息つく
眩しいほどに煌々と煌めく満月が辺りを照らしていた
心地良い風が吹く
背もたれに体を預けて深呼吸を繰り返す
眠気が来る様子はなく朝までここにいようかと考える程に風が心地よかった
「まだ体調良くないくせに何しとんの。」
突然聞こえた声に振り返るとそこに居たのは鬱だった
月明かりに照らされてその髪の毛は深海のような青に輝いていた
『眠れないからここにいるだけだ。』
ut「…ふーん。」
納得したようなしてないような返事をしてベンチの横まで鬱は足を進めた
止めた足を再び動かすことも無く、ただそこに立っていた
『そういえば、お前が倒れた私を運んだと聞いた。一応礼を言っておく。』
ut「…。」
鬱からの返事はなくしかし何か言いたげな表情を横目で見た後に月を眺める
言いたければ勝手に言うだろう
それを私が引き出す理由はない
風が止んだ時、鬱が独り言のようにぽつりぽつりと話し出した
ut「目が覚めて、皆にまた会えて俺は本当に嬉しかった。
ずっと会いたくて、だから本当に嬉しくて、なのになんでやろな…。」
自嘲するように笑みを浮かべて鬱は隣に腰かけた
何かを確かめるように目の下を触る
目の下を触った何もない手のひらを見つめて小さく言った
ut「涙が、出んかったんや。」
傷だらけの手のひらは彼の壮絶な経験を物語る
確かにあったその経験はたくさんの傷と引き換えに彼から何を奪ったのか
それが分かるのは自分自身
ut「おかしいなって思った、思ったけど、後で起きたシャオロンも泣いてなかったからそんなもんなんやって。
けど違った。確かに俺はあの時おかしかったんや。」
手に向けていた視線をあげて鬱は月を見上げた
ut「"仲間は信じろ、それすらも出来なくなったら終わりだ"
その言葉で気がついた、ずっと会いたかったはずなのに、心の底から信じてるはずなのに、無意識のうちに俺は仲間さえも信じられんくなっていた。
人間という存在が俺にとって警戒するべき対象になっていたんや。」
声を震わせながら細く、細く声を吐き出していく
私はただ何も言わずにそれを聞いていた
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ライ - すごく面白いです！すごく大好きです！主さんのペースでこれからも頑張ってください！ (2022年3月27日 22時) (
レス) @page9 id: 9516bfdddc (このIDを非表示/違反報告)
千菜(プロフ) - 続編おめでとうございます！この作品リメイク前から大好きです！これからも応援しています！！ (2022年3月10日 0時) (レス) @page1 id: 4f425976bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らい | 作成日時：2022年3月9日 23時
