9.面接合格者 ページ10
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今までの3人と同じ様に、出した紅茶に、すでに惚れ薬を入れておく。
惚れ薬の実験する、とは、伝えない。
でないと、気持ちについての実験なのだから、惚れ薬を飲まされている、と変に意識されると、正しく惚れ薬の効果が判らない可能性がある。
まずはその惚れ薬を、気づかない様に飲ませることができるか確かめたくて。
継続的に飲ませなきゃいけないものだから、一回くらいは大丈夫。
ベッキョンさんに、紅茶を差し出す。
「あ、ありがとうございます…」
そう言って伸ばした手に、目が止まる。
まるで女の人の様に、綺麗な手…。
「…手、綺麗ですね」
つい、そう口にしてしまうほど。
「え？あ、はい…よく言われます」
…口にしたはいいものの、ろくに会話の続け方が分からず、微笑んで誤魔化す。
やばい。会話って、どうやって続けるんだっけ。
ギョンス以外とろくに話さないから、分からない。
とにかく、お茶を飲んだベッキョンさん。惚れ薬には、気づいてなさそうだな。
自分の名前を名乗って…ここから、ベッキョンさんが、私に惚れるに相応しいか、見極めていく。
「ベッキョンさん…事前の情報だと…歌がお好きとか」
「は、はい…歌手で…歌うのが、好きで、得意で…」
私から目を逸らして、きょろきょろと忙しなく目を動かしている。
…さっき面接した3人も、紅茶を飲んだ後こんな感じになってた。
もしかして、惚れ薬の効果だろうか。
そんなに早く効くのかな。あとでメモしておこう。
「そうですか。では、歌ってみていただけますか」
「え、今ですか？」
「はい。歌ってください。あ、お仕事ですもんね、お金はお支払いしますよ」
「あ、いえ、一節くらいなら…」
そう言うと、ベッキョンさんは咳払いをする。
それから、徐に歌を歌い始める。
♪〜
実験のために借りたこの広い広い部屋に、ベッキョンさんの歌声が響き渡る。
…透き通っていて、綺麗。
「…っていう、感じですかね…」
「…ありがとうございます」
へへっ、と照れくさそうに笑うベッキョンさん。
…いいかも。
顔も子犬みたいで可愛いし、でも歌ってる時の表情はなんだかセクシーでかっこよかったし。
この人に、してみようかな。
この人なら、私を、正しく、愛、してくれそう。
直感も、そう言っていた。
「…合格です」
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
