8.一目惚れ…？ ページ9
＜ベッキョン＞
『はい』
昨日の、鈴の鳴るような声…電話口の人と同じだ。
「あ…面接に来たビョンベッキョンです…」
『どうぞ、お入りください』
ウィーン、と、大きなガラス扉が開く。
こんなところ、初めて来た…緊張する…。
俺みたいな貧乏人の格好で来て、落とされない？スーツの方が良かった？
なんて思いながら、エレベーターで10階へ。
ピンポーン
部屋のインターホンを押して少し待つと、
ガチャ
とドアが開いて、
「いらっしゃいませ…どうぞ、中に」
女の人が、出迎えてくれた。
「お邪魔します…」
用意されていたふかふかのスリッパを履いて、中に入る。
見たところ…普通の家っぽいけど。
でも、生活感は、無い。
ゴミ箱にはゴミが入って無いし、家具もピカピカ、新品っぽい。
この女の人の家にしては…まるで、モデルルームだ。
「どうぞ、そちらにお掛けになってください」
「あ…はい、失礼します…」
女の人はそう言ってキッチンの方へ歩いて行った。
俺は、これまたふかふかのソファに腰掛ける。
…やべー。なんか緊張するー…。
まぁ、100万円が掛かってますからね…その代わり、何されるか分かんないけど。
「どうぞ」
丁寧にお茶を持って来てくれる女の人。
「あ…ありがとうございます」
俺はお礼を言って、お茶の入ったティーカップを手に取る。
「…手、綺麗ですね」
女の人はそう言いながら、俺の目の前のソファに座った。
「え？あ、はい…まぁ、よく言われます」
「そうですか」
女の人はそう言って微笑んで、特に会話を続けるつもりもないらしい…なんだったんだ。
一口、お茶を飲む。
紅茶かな…甘い。砂糖でも入ってるのかな。
「えぇっと…ベッキョンさん、でしたよね」
「あ、はい。ビョンベッキョンです…あなたは…？」
「申し遅れました。私はAです」
「A、さん…」
そうか、昨日もギョンスさんがそう呼んでた。
可愛い名前だな…って、え、何。たかが名前で。
「ベッキョンさん…事前の情報だと…歌がお好きとか」
「は、はい…歌手で…歌うのが、好きで、得意で…」
じっと見つめてくるAさん。
…なんなんだ、これ。
いや、すごい綺麗な人なのは分かるけどさ。
なんか、その瞳に吸い込まれそうで…ドキドキする。
え、俺、一目惚れでもした…？
にしては遅くね？
しかも俺、そんなタイプじゃないんですけど。
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
