6.100万39円 ページ7
＜ベッキョン＞
「…すいません、手元にきっかり390円しかなくてですね…」
「あぁ…そうですか…」
…どうしよう。39円。たった39円ぽっちなのに。
情けねぇ。けど仕方ない。
プライドを捨てて、まけてくれ、とお願いするしか…
「じゃあ、あのチラシに、応募してあげてください」
「え？」
ギョンスさんが指差すのは、さっき俺が見てたチラシ。
あの、怪しげなやつ。
「あれ、僕の幼馴染がやりたい実験みたいで。怪しいかもしれないですけど、彼女の腕は確かなので」
「彼女…って、さっきの？」
「はい。天才化学者です」
天才化学者…そうは見えなかったけど。
「さっき見てましたし、気になるんでしょう？」
まぁ…だって、何より、100万円、ですからね！！！
「僕も彼女の実験は助けてあげたいので…はい、これ」
ギョンスさんは、カウンターの下から、あれと同じチラシを出す。
「そこにあるQRコードを読み取るみたいですよ」
ギョンスさんがそう教えてくれる…
やって、みるか。
39円、と、100万円の、ために。
俺はスマホを取り出し、QRコードを読み取る。
すると、応募フォームが出てくる。
年齢、住所、職業、電話番号、メールアドレスなどの基本情報から、特技、趣味など、プライベートなことまで。
そして、
『恋愛経験について教えてください(交際人数、交際時期など、できるだけ詳しく。自由記述)』
やはり恋愛だ。
普通の実験じゃなさそうなんだよな…と思いつつ、記入していく。
全部記入し終えて、送信…
『送信が完了しました。面接の日程、場所等をお電話にてお伝えするので、しばしお待ちください』
「はい、終わりました」
送信完了場面を、ギョンスさんに見せる。
「はい、確認しました。では、390円になります」
よし、39円浮いた！
小銭をパラパラと出して、会計を済ませ、ギョンスさんからレシートを受け取る。
「ごちそうさまでした！」
「またのご来店をお待ちしております」
家に帰り、夕方。
なんとなく、もらったチラシをまた眺めていると。
♪〜
スマホが鳴る。
見ると、知らない番号。
もしかして…と、チラシを見ると、おんなじ数字が書いてある。
もう連絡が来たのか。
そう思い、電話に出る。
「はい、もしもし…」
『もしもし。ビョンベッキョン様のお電話でしょうか』
鈴の鳴る様な声が、電話越しに聞こえて来た。
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
