金木犀に包まれて (ページ6)

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5.ハンバーグ390円ページ6

＜ベッキョン＞

「お客さん…どうかしました？」

奥の方から、さっきのギョンス、っていうらしい店員が出てくる。

「あ、いえ…すいません、大きな声出して…」

気まずくて、そう返す。

ギョンスは、俺と、俺が見ていたチラシを交互に見て、

「…興味があったら、どうぞ」

そう言って、また奥の方へ行ってしまった。

改めて、チラシを見る。

100万円…確かにそこにはそう書いてある。

金欠の俺には、喉から手が出るほど欲しい金額だ。

けど…明らかに、怪しい。

『20才から30才の心身ともに健康な男性』

これは分かる。年齢や性別の指定はありえそうだもん。

でも、次。

『3ヶ月間こちらが指定した家に住むことができる方』

…なんだこれ。なんか、イメージ的に…監禁、されそうなんですけど…本当に、家…？

そして最後。

『恋愛経験の豊富な方』

なぜ、それが、必要なんだ。

プレイボーイである必要が、なぜ。

…まさか、男性に相当な恨みを持ってて、復讐を…とか…！？

このチラシ、持ってた、さっきの、人…。

さっきは慌ててたから思わなかったけど、思い返すと…

綺麗な人、だったな。

まるで、穢れを知らないかのように。

あの人が、この実験を…？

助手ってだけかもしれないけど。

「お客さん、おまたせしました」

「あっ…はい、ありがとうございます！」

ギョンスに呼ばれて、慌てて自分の席に戻る。

ジューッ…と美味しそうな音を立てる鉄板の上に乗った、ハンバーグ…マジで美味しそう。

「いただきます…」

「はい、どうぞ」

切った瞬間にジュワッ肉汁が溢れ出る。

ナイフで一口大に切って口に運ぶと、肉の味がしっかりしてる…久しぶりの、肉…！

「美味しい…！」

「はは…ありがとうございます」

少し離れたところでカップを拭いていたらしいギョンスにも声が聞こえていたらしい。

「ほんと美味しいです！これで390円なんて…！」

「まぁ、サービス価格ですからね」

ほんと、良いお店を見つけたもんだ…！

「会計、390円…の税込みで、429円になります」

「…え」

ろくに食べておらず、俺の縮んでいた胃にはお腹いっぱいになって大満足、幸せ…といったところで、会計にて、一気に冷める。

「…税込み…？」

「税抜き価格、と、書いてあったはずですけど…」

…やばい。390円の誘惑に、負けてしまっていた…。

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