25.好きな気持ち ページ26
＜ベッキョン＞
不安だった。Aが、昨日のこと忘れてるんじゃないか、もしくは無かったことにするんじゃないかって。
でも、ちゃんと覚えてくれてるらしかった。
心の前に、身体が繋がってしまった。大切にしたかったんだけどな。
でも、自分なりに、昨夜は大切に大切にAを扱った。愛もたくさん込めた。
けれど、Aは、「良かったよ」だけしか言ってくれない。
ちゃんと伝わったのか、不安になる。
こんなに、俺の、Aを好き、って気持ち…
思えば、俺はAのどんなところに惹かれたんだろう。
「っ、あつっ！」
「ばか。湯気立ってますけど〜？」
「見えてるよ！でもお腹すいちゃって…」
適当にトーストを焼いて、あまり物のインスタントスープを作って。
一緒にいただきますしたら、Aはすぐにスープに口をつけて、こんなことになってる。
…可愛いな、やっぱり。
スープを飲む仕草は、両手で綺麗にカップを持ってて上品なのに、やってることはまぬけなんだもん。
守りたくなる。
「ベッキョン、今日の予定は？」
ご飯を食べ終わって食器を一緒に洗いながら、Aは聞いてくる。
「ん、今日は休み。どっか出かける？」
「うーん、お出かけか。いい天気だしね」
そう、Aはベランダを見て言い、キュッ、と蛇口を閉めた。
「その前に…一服させて」
「…うん。わかった」
テーブルに置いていたタバコとライターを持って、ベランダに出ていくA。
トントン、とタバコの箱を叩いて一本取り出し、箱をポケットにしまって、ライターでタバコに火をつける。
そして口元に持って行くと、フーッと息を吐き、一緒に白い煙を吐く。
無駄の無い慣れた動作だ。
俺は、それに惹かれるように、ベランダに歩いて行った。
…やっぱり、タバコを吸う時の彼女は、寂しそうな顔をしていて…
嫌いだ。
でもベランダの窓を開ける勇気はなくてただ立っていると、Aがこちらに気づいた。
「なに？」
窓越しの声だ。
「…タバコ、やめないの？」
俺は、素直にそう聞いた。
「んー…辞める理由も無いかなって」
「健康に悪いよ」
「そう言うけど、バカバカ吸ってるおじいちゃんも元気に生きてるし、人は死ぬ時は病気関係なく死ぬよ」
そう言って、遠い目をしながらまたタバコを吹かす。
「…俺は、やめてほしいけど」
その俺の言葉は、少しの、期待を孕んでいた。
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
