2.天才は愛を知らぬ ページ3
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私は、天才化学者、と呼ばれている…裏の、社会で。
24歳という若さで、数々の治療薬を作り、それは父親のパイプを使った裏社会で取引される…
といっても、何もヤバいものを作っているわけではない。
自分の作った薬で誰かを苦しめるなど、私の信条ではない。
表の社会では、１つの薬を作るだけで7年から19年の時間を要する。それは、臨床試験や国の承認に多くの時間を要するからだ。
その無駄な期間を最大限まで削って薬を作り、裏社会に流し、実際に人を救うことで、莫大な資産を得ている。
お金なら、ある。
私には、才能も、ある。
じゃあ、無いのは…
「…ここまでして、恋人、欲しい？」
ギョンスが目を細めて言う…そう、恋人。
「うん、欲しい。寂しいもん、あの暗い実験室で、ずっと1人で化学式と向き合うの」
小さな頃から、英才教育をされてきた。俺の役立つ人間になれ、と、父親から。
小学校の時に、高校までの理科を全て習得した。
周りの子たちは外で遊んでいるのに、私は、ずっと家にこもって、実験していた。
ずっと化学式に向き合って来た。
けど…ふいに、寂しくなった。
実験するのは、楽しい。
けれど、街中を歩く時、もっと楽しそうな人たちがいる。
それは決まって、男女のペア…カップルだった。
羨ましかった。
誰かに、愛、されているということが。
「恋愛初期の脳は、麻薬中毒者と同じような状態らしいの。アドレナリン、ノルエピネフリン、ドーパミン…それらで溢れかえってるって」
「へ、へぇ…そう」
「だから、それらの化学物質を脳内に人工的に発生させることで、恋をしているのとおんなじ状態になる」
私には、愛が分からない。
恋と愛の区別は分からないけど…恋愛も、愛、って入っているから、愛なんでしょ？
だから。
「それを思いついて、実際に惚れ薬を作っちゃうとはねぇ…」
私は、惚れ薬を作った。
これで、応募して来た人の中から、私のことを好きになって欲しい人を選んで、薬を飲んでもらう。
とりあえず3ヶ月で試して、薬が上手くいったら、その後も投与し続ければ良い。
そうして、私を、愛、してもらおう。
そしたら…幾分か、私のこの寂しさも、満たされるだろうか。
「そんなことしなくても…Aを愛してくれる人は現れると思うけどな」
「…ギョンスには、分かんないよ。いいの！はい、これ、貼っといて！」
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
