金木犀に包まれて (ページ19)

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18.愛してあげてページ19

＜ベッキョン＞

翌日。

Aと夜落ち合うのは、最寄駅から電車で20分ほどの駅だった。

それまで、特に予定は無かった。

使ってない部屋があるくらい、広い広い家。

2人で住むには勿体無いくらい。

俺はリビングのふかふかのソファに座って、ぼんやりする。

…俺が悪いのかな。

もうちょっと、グイグイいくべき？

もっと好きだって、たくさん態度で伝えないと、Aは分からないのかな。

…つーかさ、俺にばっかり恋愛事情聞いてきたけどさ、Aはどうなわけ？

恋愛したことあんの？

Aに男…か。

「…ギョンス」

あの人、幼馴染、とか言ってたよな。

暇だし、ちょっくら聞いてくるか…。

「そういうことを聞くってことは…ベッキョンさんは、Aのことが好きなんですね」

ギョンスの喫茶店に行き、適当にお昼ご飯を注文し、届いたタイミングで、ギョンスに、Aの恋愛事情を教えてほしい、と言ったら、そう言われた。

「…まぁ、はい。好きですけど…あ、まさか、ギョンスさんも？」

「いえ！僕は、Aの幼馴染ってだけで」

即座に否定されて、少し安心する。

「あの子は、恋愛、したことないんですよ」

「え、そうなんですか？」

モテそうなのに。可愛いし、頭良いと思ったら、抜けてて性格まで可愛いところあるし。

「だから、ベッキョンさんが教えてあげてください」

「俺、が…」

「はい。たくさんあの子を愛してあげてください…今まで、あの子がそうされなかった分」

ギョンスはそう言って、厨房の方に消えていった。

今まで、愛されなかった分、か…。

確かに、彼女が時々する、寂しそうな目。

なんだか、腑に落ちる気がする。

それにしても、愛する、か…。

今まで、誰かと付き合っても、愛をもらってばっかりで。

自分から何かしようとは、しなかったかもしれない。

じゃあ、逆に、今まで愛してもらった分、それをAにしてあげればいいじゃないか。

…よし。

Aを、たっぷりと愛してやるぞ。

夕方、待ち合わせをしていた駅の改札。

少し肌寒い中、改札の向こうにAの姿を探す。

スマホで連絡が来てないか確認しながら。

「ベッキョン！」

声がした方を見れば、大きく手を振りながらこちらに走ってくるA。

そんなに走らなくても…と。

「うわっ！」

「おっと」

つまづいてかけるAを、慌てて抱き止める。

初めて、Aに触った気がする。

…あったかい。

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