17.変わらない彼女 ページ18
＜ベッキョン＞
俺には、告白にぴったりのムードとか分からない。
だから、もう思い切って、帰って彼女を見つけるなりそう言った。
なんて返されるかな。
彼女の答えに期待していると。
「…そう」
彼女は短くそう言って、笑った。
…え、そんだけ？
「え、あの…」
Aは灰皿にトントン、とタバコの灰を落とし、また口を付ける。
伏せた目で、夕焼けをぼーっ、と眺めながら、タバコを吸う。
…似合わないようで、似合う。
彼女は可愛らしい顔をしている。
けれど…ふとした瞬間に見せる、その寂しそうな目。
その目をしながら考えていることを、まるで煙で隠すかのように、タバコを吸う。
「バラの花束事件、また起こったのかぁ…物騒だなぁ」
「何それ？」
「突然倒れて死ぬ病気に見えるんだけど、その人の家には必ずバラの花束が届くらしい。だから、病気じゃなくて殺人なんじゃないかって」
「へー。なんでわざわざバラの花束なんて届けるんだろうね。ただの病死にできるのに」
「確かに…ねぇ、化学者からしてさ、こういう殺人ってあり得んの？」
「んー…私だったら、毒として作用した後に無害なタンパク質になって分解されるものを使う」
「そんなことできんの？」
「できそうだけど、私はしないよ。私の作ったもので人が死ぬなんて、落ち着いて寝れないもん」
あれから。
俺が、好きだ、と言ったのに、彼女は至って普通だ。
いつも通り、暇な時はリビングで、お互いスマホを弄りながら、何気ない会話を交わす。
…いや、強いて言うなら、ちょっとAの機嫌が良い気もするけど。
俺…告白、したよな。あれ、告白、だよな？
A…もしかして俺のこと、男として見てない…？
好きっていうのは…友達としての好き、だと捉えられた？
あまりにあっさり告白しすぎたか。
そう考えるほど、彼女の態度は変わらない。
相変わらず、何を考えているのか分からない。
対して、俺はというと。
「ベッキョン〜」
「な、何？」
「明日、暇？」
「うん、特に予定、無いけど…？」
「ちょっと遠くに用事があるんだけどさ、せっかくならそこでご飯食べたいんだよねー。来てくれない？」
「い、いいよ」
話をしながら、楽な姿勢をとっているAの、チラチラとトレーナーの裾がめくれて見える白いお腹に、ドキドキしていた。
俺も…男なんだけど。
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
