金木犀に包まれて (ページ16)

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15.好きになったページ16

＜ベッキョン＞

「…俺の、何が分かんの、ジュンミョニヒョン」

「いや、誰が聞いてもそう思うだろ！どうでもいいと思ってる女の子にそんなこと思わないって」

俺は大手のCDショップでアルバイトをしている。

その先輩、キムジュンミョンとバイトの休憩時間に雑談している時、ふとAの話をすると、そう言われた。

「嫉妬だろ、嫉妬。さっさと告白しなって。言ってたじゃん。事務所の偉い人に、お前は恋愛経験が浅いから売れないんだって」

そう。付き合っては別れてを繰り返してきた俺にとって、恋愛経験こそ多かれど、真剣に付き合ったことは無かった。

そして…自分から、女の子を好きになったことすらも。

「…告白って、どうやってすればいいんすか」

「え？いや、普通に…好きだから、付き合ってくださいって言えばいいだろ」

「ほー…」

「ほー、って何だよ。言われ慣れてはいるだろ」

Aに、好き、と言ったら、どんな反応をされるだろうか。

出会って2週間。

彼女のことを、そりゃあ最初よりはたくさん知った。

それにしても、2週間で告白して付き合う、かぁ…普通もうちょっとお互いのこと知ってからじゃない？

「まだ早いかなぁ…」

「いいのか？他の男に取られても」

「うっ…」

え、惚れる側って、こんな心労があんの？

初めて知ったんだけど。

「付き合ってから、お互いのこと知っていけばいいわけだし」

付き合う、かぁ…Aは、俺のこと、そういう目で見てくれてんのかなぁ…。

「好き、って伝えるだけでも、相手に意識させるだけで効果があると思うぞ」

「…珍しくいいこと言いますねジュンミョニヒョン」

「珍しくってなんだよ！」

確かに。付き合えるかどうかは置いといて、好き、ということだけでも伝える、か…。

「ただいまー」

バイトが終わって、夕方。彼女のいる家に帰る。

リビング…いない。

代わりに、ベランダの窓が開いている。

「…A、ただいま」

「あぁ…ベッキョン、おかえり」

彼女と過ごして、一番意外だなと思っていたこと。

「どうしたの？ベッキョンも一服する？」

彼女は、タバコを吸う。

「ううん。俺、歌手だし」

そう言って、Aの隣に並んでベランダの柵にもたれる。

「どうしたの？」

「いや…言いたいことがあってさ」

西陽が少し眩しい。

彼女の燻らせる煙が、ふわっと俺の方に向いている。

「…あの、さ。俺、Aのこと、好きになった、みたいだわ」

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