10.単純な男 ページ11
＜ベッキョン＞
「…合格です」
「…へ？」
「いつ頃ここに引っ越せそうですか？」
…ちょ、待。
いや、まだ、紅茶飲んで、名前聞かれて、歌っただけ、なんですけど！？！？
「え、あの、こんなんで、いいんですか？」
「…えぇ、合格です」
「ご、合格…で、あの、ここに引っ越すっていうのは…？」
「チラシに書いてあったはずです。『3ヶ月間、こちらが指定した家に住むことができる人』と」
そういえば、書いてあったけど…
「え、ここ、ですか！？！？」
「えぇ…ここに、私と一緒に住んでもらいます」
…えーっと…。
「…ちょっと、考えさせてもらうことは…？」
「なぜですか？」
「え、いや、あの…」
単純に、怖い！！！
いきなり、よく知らない女の人と、こんな高級マンションの一室で一緒に3ヶ月間暮らせ、なんて…！！
「一体、なんの薬の実験なんですか！？」
「そうですね…サプリメントです」
「サプリメント…？」
「えぇ。それで、あなたの体調を逐一チェックしたいので」
「…いや、それなら、通うだけで良くないですかね、住む必要性は…」
「ご足労おかけしますから」
…怪しい。怪しい臭いがプンプンする。
「…あの、やっぱり、無かったことに…」
「…わかりました。では…」
Aさんは、机の下から何かを取り出す。
ドンッ、と机の上に置かれた、それ。
カチャッ、という音ともに、いざ、オープン。
「報酬の100万円です。これを先にお支払いします。危険を感じたら、これを持って逃げていただいて構いません」
…やば。
目の前にあるのは、ドラマとかで見たことがある、銀色のアタッシュケースに入った、札束。
「あなたに危害は絶対に加えません。約束いたします。どうか、受け取っていただけませんか」
キラキラと輝く、札束…と、
Aさんの、上目遣いの、顔。
…え、可愛い。
ねぇ、ビョンベッキョン。大金貰える上にさ、こんなに可愛い女の人とさ、一つ屋根の下で暮らせるなんてさ、逆に楽園じゃない？
薬？まぁ、ちょっと怖いところはあるけどさ。
こんなに純粋無垢そうな人が、俺に変な薬飲ませるわけないっしょ。
「あの…いかがですか…？」
「やっ、やる！！やり、ますっ！！！」
俺は、単純な男である。
「よかった…嬉しいです。これからよろしくお願いします、ベッキョンさん！」
.
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
