1.彼女の実験 ページ2
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暗い暗い、無機質な部屋。
じめじめとした空気が、その部屋を支配する。
その中で、私は、生きていた。
たくさんのガラス製品に、一般の人には小難しいであろう機械、重ねられたたくさんの書物。
ここが、私の実験室。
「…あと、炭酸ナトリウム…エチゼングリコール…それと…」
ビーカーに入った液体を、試験管に駒込ピペットで入れる。
1mg違うだけで、全く別のものができる、繊細な作業。
黒板いっぱいにびっしり書かれた化学式。
それを見ながら、丁寧に、丁寧に…
「…できた…！」
試行錯誤すること、実に3年。
ついに、完成した。
「これで、私は…！」
試験管の中に入った、ピンク色の液体。
それは、私の、希望のかたまり。
手で煽いでクンクンと匂うと、不思議と、甘い香りがした。
…うん、上出来。
ガシャン…ガシャン…
『被験者募集』
そう一番上に書かれた紙が、コピー機からたくさん印刷されて出てくる。
それを持って、ある場所に向かう。
“月曜昼数量限定 ハンバーグ390円(税抜き)”と書かれたホワイトボードを尻目に、ドアを開ける。
「…あぁ、A。いらっしゃい」
やって来たのは、いきつけの喫茶店。
いつものように出迎えてくれるのは、ガラス玉のように綺麗な目をした男。
「ギョンス…ついに、できたの！」
「できたって…え、まさか、あれのこと？」
ドギョンス。この喫茶店のオーナーで、私の幼馴染。
唯一の、異性の友達…いや、同性を含めても、友達は、ギョンスだけだ。
私の父は、表では言えないような仕事をしている。
私は、そんな親に、ひっそりと育てられた。
そのせいか、私には友達がなかなかできなかった…ましてや、恋人、なんて。
「うん！だから、これ！被験者募りたくて…ここの喫茶店にも貼ってくれない？」
私は、持って来た紙をギョンスに見せる。
「なになに…
『被験者募集。
新しい試験薬の被験者を募集します。興味のある方は下記のURLから必要事項を記入の上ご応募ください。後日、お電話にて面接の日程を決めさせていただきます。
対象…20才から30才程度の心身共に健康な男性。3ヶ月間こちらが指定した家に住むことができる方。恋愛経験の豊富な方。
謝礼…
100万円』！？」
ギョンスは紙に書かれたことを読み上けて、驚いた。
「さ、さすが天才化学者…お金はあるわけね」
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年2月6日 2時
