32.馬鹿犬 ページ33
＜ベッキョン＞
「…へ？」
Aはポカンとした表情を浮かべた。
それを見て俺が悪戯っぽく笑うと、Aの顔はみるみるうちに真っ赤になる。
「っ…からかったのね！？一体どこから！？」
「あーっ！！そうじゃない！！落ち着いて！！！」
「どこまでが本気！？」
「全部！！！あー…飼い犬っていうのは、その、冗談というか、比喩、というか…」
「比喩…？」
「えぇっと…お試し期間？」
「…お試し、期間…」
「Aが、俺に恋愛的な気持ちを持てるのか…付き合いたいと思うのか、試すといいよ。それまでは、ビビと触れ合えないわけでしょ？だから、ビビの代わりになれるよう、俺、頑張る！！」
Aは、また目を丸くして。
「…はぁ」
ため息をつく。
「ほんと…馬鹿ね、あんたは」
呆れたような顔…今は、それすら、なんだか愛おしい。
「馬鹿でいいよーだ！馬鹿だからキャリアにも拘らないし〜なんなら無職になってもいいし〜」
「そ、それはダメ！！」
「無職になったらAの飼い犬にしてもらおっかな〜」
「働け、バカ犬！！！」
「あははっ！！」
Aがこんなに話してくれることなんて、今まで無かったから…バカ犬って言われたことすら、嬉しくて笑うと。
Aも、少しだけ口元が緩まった。
「…ほんと…調子狂う…」
そうボソッと呟いたA…ほんのり顔が赤くなってて、可愛い…。
「…ね、A。飼い犬たる俺の良いところはねぇ…ビビと違って、オプションがあるところだよ」
「…オプション？」
「うん。ビビはAの心を満たしてくれる存在だけど…俺は、Aの心だけじゃなくて…身体も満たせるんだ」
よくもまぁ、我ながらスラスラとこんな恥ずかしい台詞出てくるよ。
普段は頭使うの苦手な癖に、こういう時は頭が回る回る。
「べ、ベッキョン…」
俺は首元に顔を埋めて、軽くキスをする。
「身体の相性は最高だし…世の中の恋人の条件、もう１つ達成してるね」
ちゅっ、ちゅっ、と、首からうなじ、耳にかけて、優しくキスを落としていく。
「飼い犬から恋人になるの、そんなに時間、かからないかも」
熱を込めてそう囁けば、Aの耳は真っ赤になる…
「A、限界」
「え、ちょっ…！！」
Aを抱きかかえて、ベッドに降ろす。
スーツ姿のA、なんて初めてで…やばいな、えろい。
「気持ちよくなろーね、ご主人」
.
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年11月6日 6時
