27.朝の会話 ページ28
＜ベッキョン＞
Aが車から離れると、セフンの運転する黒塗りの高級車は静かに去って行った。
…あんな高級車に乗れるセフンって、何者なんだろ…
っていうのはさておき。
どうしよう、色々気になる…
『さっさと恋人作ればいい話なんだから』
とは？
ビビとの別れをあんなに惜しんだ理由とは？
…あーっ、もう！
「A！」
「っ、び、ビョンベッキョン…」
ここは会社から少し離れてるし、大丈夫かな、と思って声をかける。
「おはよう…偶然見かけて、つい声かけちゃった…」
「…そ、そう…」
Aはどこかよそよそしく言って、会社の方に歩き始める。
俺は隣をキープしつつ、Aの様子を伺う。
よそよそしいのは当たり前だ。ここはホテルじゃないし、会社に向かってるところなんだから。
「…離れて歩いてよ」
Aがあまり俺を見ないように言う。
「大丈夫。たまたま行きで会って、新しいプロジェクトについてちょっと相談してたってことにしよ。一回だけなら一緒に出社しても大丈夫」
「いや…」
少し足を早めるAに、俺は怯むことなくついて行く。
「ねぇ！セフンくんに送ってきてもらったの？」
そう聞くと、少しAのスピードは弱まった。
「…見てたの？」
「あー…ちょっとだけ…？」
「…そう」
Aは少し考えた後、また足のスピードを速める。
…ヤバいな、会社近づいてる。早めに、気になることは言っとかないと…
「あのさ…恋人作ればいい話、って、どういう意味？」
そう言うと、急にAの足は止まり、パッと顔を俺に向ける。
驚いたような顔をしている。
「き、聞いてたの…！？」
「あー…聞いてたっていうか、聞こえた…？」
いや、ばっちり盗み聞きだったけど…。
Aは少し顔を歪めて俯く。そして。
「…今夜、いつものホテル来て」
ボソッとそう言って、呆気に取られる俺を残して、カツカツと忙しなくヒールの音を響かせて、Aは歩いて行った。
…どういうつもりだろう。何の話、されるんだろ…。
「次、ビョンベッキョンくん、お願いします」
「は、はいっ…！？」
名前を呼ばれ、慌てて立ち上がる。
しまった、会議中、またボーッとして…。
恐る恐る名前を呼んだ声の主見ると…細められた大きな猫目が、こちらを見ていた。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年11月6日 6時
