26.ひかれてる ページ27
＜ベッキョン＞
「はーっ…」
昨日ホテルから家に帰ってきて、そのままベッドになだれ込んで寝て、気づいたら朝。
慌ててシャワーを浴びて、会社に向かう準備をする。
手を動かしつつ、朝シャワーしたせいかやけにすっかりした頭で、昨夜ことを、思い出す…。
『俺のこと、犬だと思って』
「…いや、やっぱヤバい奴だよなぁ〜！！！」
途端に爆発しそうなほど恥ずかしさで顔が熱くなる。
変態だよ、完全に。
引かれた？…いや、そこまで…
『馬鹿ね、あんたは』
彼女が去る前に最後に放ったその言葉とその時の表情…
そのまま、しばらく動けなくなるくらい、すごく、ドキッとした。
余裕のある妖艶な大人の表情。
引かれては…ないけど…惹かれては、いる…
なーんてね！！！
…なーんてね、じゃねぇよ。上手いこと言ったみたいに…
「あーっ！！！」
AAAA、最近、そればっか！！！
ぶるぶると頭を振り。
「いってきます！！！」
誰もいない部屋に元気よく言って、少し早めに家を出た…
…あーあ。せっかく邪念は家に置いてきたはずなのになー。
「ビビちゃ〜ん…ヌナ、頑張るからね！？」
「わんっ！」
「うぅ、そんな目で見ないでぇ…離れたくなくなっちゃう…」
「くぅん…」
会社から少し離れた場所にて。
いつもより早く出ちゃったから、遠回りして行くかなー、と思って会社の人があまり通らない道を歩いていると。
聞き慣れたような聞き慣れないような声と、犬の鳴き声が聞こえてきて。
まさかと思って見ると。
黒塗りの高級車に張り付いて甘々な声を出すAと、窓からひょこっと顔を出す真っ白でもふもふなビビ…
どっちも、可愛いん、だけど…。
「ビビちゃん…また、会えるよね…？」
…って、何、そんな今生の別れみたいなことして。
俺は気になりすぎて、誰かと待ち合わせしてる風に立ちつつ、バレない距離でAをチラチラと見ていた。
「ヌナ、いい加減にして！！」
この声…Aの弟の…セフン、だっけ？
「さっさと恋人作ればいい話なんだから」
…ん？どういうこと？
「…がんば、る…」
「じゃあね、ヌナ。会社遅れないようにね」
「…送ってくれてありがと、セフナ」
Aはいつものテンションに戻って、車の中に向かってそう言った。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年11月6日 6時
