15.アニマルセラピー ページ16
＜セフン＞
「…ほっといて」
ヌナは真顔で、とにかく料理を食べる手を動かす。
これ以上言ったら本格的に嫌われそうだし、やめとくか。
俺も黙ってご飯を食べる。
食べながら、昨日ヌナといた男を思い出す。
スーツ姿だったな…ヌナとなんかキャンキャン言い合ってて…
子犬みたいな人だった。
『え、さっき言ってた、弟さん…？』
そう言ってた…ってことは、俺のこと、なんか話したのかな。
家族について話すってことは…結構親しい？
…でも、外見はヌナのタイプじゃなかった気がする。
ヌナ…犬系よりも…
「わんっ！！」
「あら、ビビちゃん、どうしたの〜？まだご飯欲しいの〜？」
足元に擦り寄ってきたビビを、ヌナは抱き上げる。
「へっ、へっ、へっ、」
「んー、ヌナまだ食べてるからねぇ〜、食べ終わったらおやつあげるからね〜」
「わんっ！」
「んふふっ…」
ヌナはデレデレした顔で、ビビに顔を舐められたり、ビビにキスしたりしてる…
Aヌナって、元々猫派、だったのにな。
「ヌナ、あんまりおやつあげすぎないでよー？最近ヌナが甘やかしすぎてビビ太ってきてるんだからね」
「…だって、ビビがねだるんだもん」
そう言いながら唇を尖らせるヌナに、ビビは戯れている。
ほんと、好きな人にはとことん甘いんだから。…ビビは犬だけどね。
「我慢しないと。ビビには長生きしてほしいでしょ？」
「…うん」
「お別れは、嫌でしょ？」
「…うん…」
ヌナはぎゅっとビビを抱き締める。
…相当、ヌナは前の彼氏と別れたことを引き摺ってる。
自分のせいだって。
俺とビビと暮らし始めたのは、俺の仕事が忙しくなったっていうのもあるけど…
本当の目的は、アニマルセラピー。
失恋の傷を、ビビなら癒せるかなって思って。
思惑通り、ヌナとビビは相思相愛で、ヌナもビビにデレデレだけど。
ふとした瞬間に…やっぱり、思い出すみたい。
どうにかあの人の面影を消そうと頑張ってるみたいだけど…
昨日の男も、そのためかな。
「…ごちそうさま。おいしかったよ。ありがとね、ヌナ」
「…うん。どういたしまして」
ぼーっとした顔でそう言うヌナ。抱き締められているビビは、雰囲気を察したのか大人しくしている。
そんなヌナの顔を見るのは、俺…もう嫌だよ。
ヌナの笑顔、俺大好きなのにな。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年11月6日 6時
