11.階段で言い合い ページ12
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「こんくらいあれば足りるでしょ？じゃあね」
Aは財布から取り出したお札をバンっと机に置いて去ろうとする、けど。
「ちょ、待て！」
さすがに、こんな夜遅くに女1人で帰らせる訳にはいかない。
「送るよ」
「…いい。じゃあね」
Aは冷たくそう言って、部屋を出る…それを、追いかける。
「ちょ、ついてこないで」
「なんで？こんな夜遅くに女1人で歩かせる訳にはいかないよ」
先回りしてエレベーターのボタンをピッと押すと、Aは階段の方に足を向ける。
「なんでそんなに嫌なわけ？」
外に続く階段を降り始めるAをもちろん追いかける。
辺りも暗いし駅までも遠いし…心配、なんだけど。
「…誰かと、会うかもしれないじゃない」
Aはピタッと階段の途中で足を止めてそう言った。
「大丈夫だよ…せめて駅まで送らせて」
「必要無いから。ついてこないで。一定の距離を置いて」
頑固なA…なんだか、こっちだって意地が出てきたぞ。
「いや、心配なんだって！」
「心配ご無用！！」
「じゃあタクシー呼ぶ！！」
「いらない！！いいから離れて！！」
そんな感じでギャーギャーと言い合う声が、階段に響く…と。
「なーにやってんの。痴話喧嘩？」
階段の下の方から、誰か男の声がして、俺たちはピタッと口をつぐむ。
カツ、カツ、と靴の音が響き、誰かが階段を上がってくる…やばい、怖い人に絡まれる…？
と思いながら、その場に立ったままビクビクしていると。
現れたのは、高身長でスラッとしたモデルのような体型、黒いライダースを着て抜群のオーラを放ちながらこちらを見上げる男。
「…セフナ…」
Aがそう呟く…ん、セフナって…さっきの電話の相手…？
「ヌナ、迎えに来たよ。この人、誰？」
俺を指差してAを見る男。
ヌナ…Aと、親しい間柄の…誰？どういう関係…？
「まったくもう…心配かけないでよ。あとビビが寂しがってる」
ビビの名前が出てくるってことは…
「え、さっき言ってた、弟さん…？」
俺がそう言うと、Aはハァ、とため息を吐く。
図星かな。確かに、面影はある気がする。
「…そうです。どうも。僕はオセフン。このAヌナの弟です。いつもヌナがお世話になってます」
男…セフンは、Aによく似た真顔でそう言って。
「ヌナ、この人がヌナが気になってるって言ってた…
ドギョンスって人？」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年11月6日 6時
