リナリアに苦悶する 7 (ページ32)

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331.夢中にさせるページ32

＜ベッキョン＞

ぎゅっ、と控えめに服の裾を掴まれる感覚がして振り向くと、恥ずかしそうに俯くAちゃんがいた。

「あ…ごめん、つい熱くなっちゃって…」

「い、いえ…その…」

顔を真っ赤にしてもじもじしてるAちゃん。何、可愛いんですけど。

「ほんとに言ってたよ、ベッキョン。Aちゃんのこと夢中にさせるー、って」

「え、まぁ…うん、言った…」

それを聞いて…照れてる、ってこと…？

「っ…そ、そうなんですね…」

恥ずかしそうにして絶対に目を合わせてくれないAちゃん。

なんか悔しい。

「…うん、する」

真剣な声色でそう言うと、Aちゃんは恐る恐るといったように顔を上げる。

「俺しか考えられなくしてやる！チャニョルなんか空気になるくらい！」

「…それは困るけど」

チャニョルからツッコミが入ると、Aちゃんは、ふっ、と笑った。

「た…楽しみ、です…」

少し目を逸らして、また俺の目を見て、そう言うAちゃん。

あーー…ちゅーしたい…今ちゅーしたら、最高に幸せなのに…

「だってさ。まー、イチャイチャするなら俺がいない時にしろよー。さ、ご飯食べようぜ」

チャニョルがそう言って、空気を変えてきた。

まぁ…チャニョルがいるのはしょうがないしいてくれて有難いって気持ちもあったけどさぁ…

今だけは、いないで欲しかった！！！！！

夕飯を終え、Aちゃんがお風呂に行ってリビングにチャニョルと2人きりになった。

「…なぁ、怒ってんの？俺が邪魔だったから？」

「怒ってない」

「はぁ…俺新しいところ探すからさぁ…てかお前が出てく？」

「…出てく」

「でもお前家で仕事すること多いじゃん。だから物件もこだわり強そうだし、俺が出てった方が早いかなって思ってんだけど？」

「…すいませんでしたチャニョルさん」

手のひら返して丁寧にチャニョルに頭を下げる。

「まぁ俺が一人暮らししたいんだし。それに出て行くとしてもすぐのことにはならないけどさ。てか、Aはほんとにずっとここにいるの？」

「…分かんない」

「いつか、また絶対向き合わなきゃいけないよ。セフンと」

「あー…」

今日は思い出さないようにしていたその名前。

「Aの話しか聞いてないわけだしさ。セフンの方はどんな気持ちなのか…」

「分かってるよ、聞く…聞くから…」

少し、先延ばしにさせてほしい。

せっかく…Aちゃんが俺の元に来たんだから。

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