リナリアに苦悶する 7 (ページ26)

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325.子守唄ページ26

＜ベッキョン＞

Aちゃんは、俺のベッドで寝かせた。

申し訳ない、と言っていたけど、Aちゃんをソファで寝かせるわけにはいかないし。

…アイツみたいに、一緒に寝るわけにもいかないし。

てなわけで、俺はブランケットだけ被って、リビングのソファに横になる。

ふわぁ、と欠伸をして、目を閉じる。

…大丈夫。なるようになる。

自分を信じてるし…アイツが信じてる俺を、信じる。

　カタッ

小さな物音がして、目が覚める。

あたりは真っ暗。

だけど、たしかに人の気配がする。

目を擦りながら、ゆっくりと起き上がる。

「あ…ごめんなさい、起こしちゃいました…？」

「ん…だいじょぶ…」

Aちゃんの声がした方を見る。段々目が慣れてきて、見えるようになってくる。

「お水、飲もうと思って…」

「そっか…そこのグラス使いな」

体を起こして、Aちゃんのいるキッチンに向かう。

「ありがとうございます…」

グラスに水を注いで渡してやると、ゆっくり水を飲んだAちゃん。

「寝れない？」

「あ…はい、まぁ…」

俺と違って寝起きではないと思ってそう聞くと、案の定だった。

環境が変わっているのだから、寝付きが悪くなるのは当たり前だろう。

「…一人で寝るのが、久しぶりで…」

暗いから表情はあまり見えないけど、見えなくて良かった気もする。

「あの…一緒に…は、ダメですよね」

…うん、表情が見えなくてよかったし、俺の表情を見られなくて良かった。

「寝付くまで、近くにいるくらいならいいよ」

「でも、オッパが寝れない…」

「俺は別に仕事いつしてもいいから」

…まぁ近く出社しろって言われてるけど、基本は在宅でできるからね。それに。

「それにAちゃんがこんなんじゃ俺も安心して寝れないよ。さ、部屋戻ろう」

「は、はいっ…」

一緒に俺の部屋に入って、Aちゃんがベッドに入ったのを確認すると、俺はベッドに背中をもたれて床に座る。

「俺はここに居るから」

「はい…」

Aちゃんの方を見てしまうとどうなるか、自分の理性が心配で。

だから、Aちゃんの方は見ないようにして、床を見つめる。

けれど、眠れないのか、後ろでは体制を何度か変えるように、ゴソゴソと音がする。

俺は、子守唄になるような、バラードを歌い始めてみた。

すると、

「オッパ…歌、じょうず…」

しばらくして、規則正しい寝息が聞こえてきた。

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