リナリアに苦悶する 7 (ページ17)

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316.大好きでしたページ17

＜セフン＞

あぁ、こんなつもりじゃ、なかったのにな。

こんなつもり、っていうのは…Aを、ここに置くって決めた時に描いていたこと。

行く当てがないからと、住まわせてやって、一緒に過ごす日々が増えて。

いつからか、Aは俺の癒しになっていた。

…でも。

『セフンさん…そ、その、セフンさんって、どんな女の人が好き、とかあるんですか…？』

純粋で、素直で、わかりやすい子。

Aがそんな子じゃなきゃ、俺はAを癒しだなんて思わなかっただろうに…

分かりやすいからこそ、しんどかった。

彼女が自分に向ける、俺が忌む感情が。

そうだ。辛い。辛いんだよ、きっと。

俺は、君といるとね。

いつか捨て去った恋愛感情ってものが、よく分からなくなる。

俺の捨ててきたものの山を振り返ってしまって、やたら主張してくるそれ。

それを目にする度に、なんだか光っているようにも見えて、何度も目を擦り直すんだ。

擦りすぎて、痛いくらいに。

彼女の気持ちに気付かないふりをして、どうかこのまま、このままの関係性が続いてくれ、と切に願った。

彼女自身が痛みに変わらないように。

「教えてもらったんでしょ。俺は、恋愛ができない。もちろん、Aとも」

俺は、ハッキリとそう告げることにした。

痛いのは、彼女の心と…俺の、心。

それでいい。

「Aは俺のことが恋愛的に好きだったのに、残念だったね」

俺は、やっぱり、1人で生きていくよ。

それができるから、パートナーなんていらないでしょ、って、神様が俺に恋愛感情を与えなかったんだ。

「俺はお前を女として見てないし、見れない。恋愛したいんなら、他の人としてくれ、としか言えない」

でも、Aは、違うでしょ。

1人では生きていけないからと、困って、困って、ここに来たんでしょ。

「俺以外に、いるじゃん。よかったね」

きっと、ベッキョニヒョンなら、Aの思い描く理想の恋愛ができるはずだよ。

たくさん愛されればいい。

俺のことを忘れるくらい。

俺は、Aを知ってるから。

ここまで言えば…Aは。

ガタンッ、と音がして、ゆっくりと、Aはふらつきながら立ち上がる。

そして、俺に背中を向けて、よろよろと歩き出した。

小さな背中。

「…あの、１つ、だけ…」

部屋を出る前に、Aがそう言って、半分だけ顔を振り向く。

「…大好き、でした…っ、セフン、さんっ…」

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