リナリアに苦悶する 6 (ページ49)

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298.魔法使いページ49

＜ベッキョン＞

Aちゃんは、ゆっくりミンソギヒョンが運んできてくれたご飯を口に運び始めた。

俺は、そのままテーブルのそばに立っていたミンソギヒョンに、目で、2人にさせてくれ、と伝える。

ヒョンは、少し躊躇った後に頷いてカウンターの方に歩いて行った。

「Aちゃんが寝てる間にね、セフンと電話したんだ。その時教えてもらった」

すごく濃くて大変な人生を送ってきたんだよね。

「…どのくらい、ですか」

「どのくらい…そうだなぁ。Aちゃんが思い出したくないだろうことは、大体教えてもらったと思うよ…少なくとも、相当大変だったんだなって思うくらい」

「…そう、ですか…」

Aちゃんの可愛い顔が曇る。

そんな顔を…俺は、させたくない。

Aちゃんの過去を聞いて、俺はそう思ったんだ…俺は、そう思ったのに。

「…っ、嫌に、なりました…？」

なんでそんなこと言っちゃうの。

「Aちゃんは何にも悪くないでしょ？」

「…いや、私が出来が悪いせいで…母を怒らせたし…意志が弱いせいで…入った大学も途中で諦めちゃったし…人間関係作るの下手だから…新しいお父さんたちとも上手くいかなかったし…」

話しながら、ぽろぽろと涙を零すAちゃん。

「そっか…Aちゃんは、自分のことそう思うんだね」

「…だから、全部私が悪くて…」

「うん、じゃあそういうことにしよ」

「え…？」

Aちゃんはびっくりしたように顔を上げる。

まぁ…うん、普通、Aちゃんは何にも悪くないよって言うよね。

でも俺、そんな無責任なこと、好きな子に言いたくない。

「それも全部含めて、Aちゃんのことが好き」

「へ…」

「人のせいにせずに全部自分のせいにしちゃうのが健気で愛おしいと思う人間もいるんだよ。不思議でしょ」

きっとAちゃんのさっきの口ぶり的に、面倒くさいと思われる、なんて思ってたんだろう。

『俺しか見れてない魔法を解いて、Aを解放してあげて』

「俺のAちゃんへの気持ちは変わらないよ。好きだよ。Aちゃんの全部が好き」

俺は真っ直ぐにそう言った。

Aちゃんはその潤んだ瞳を揺らした後、少し顔を伏せて、頬を赤らめた。

「…不思議、ですね、ベッキョニオッパって…」

不思議なのはAちゃんの方。

俺に好きで好きで仕方なくなる魔法をかけたのも、Aちゃんの方だよ。

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