リナリアに苦悶する 6 (ページ43)

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292.嫌な記憶ページ43

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『おなかすいたよ、おかあさん…』

『何言ってるの！！まだ問題集終わってないでしょ！？それまで食べさせるわけないでしょ！！』

『おかあさんっ…うっ…』

『泣いて許されると思ってんの？さっさと手動かしなさいよ！！』

…今朝は、久しぶりに、嫌な夢を見た。

目が覚めると７時。いつもより2時間早い起床。

子どもの頃の嫌な記憶が、夢になって現れて、最悪の寝起き。

こんなこと、当分無かったのに…セフンさんと一緒に寝るようになってから。

『何、嫌な夢でも見たの？』

『…はい。ちょっと…』

『…一緒に寝る？』

『へ？』

『俺もなかなか1人で寝るのまだ慣れないの。実家ではビビが一緒に寝てくれてたんだけどさー』

そう言って、ベッドに私分のスペースを空けてくれて。

初めて、誰かと一緒に寝た。

実家の匂いとは全く違う、セフンさんの香りがして。

あぁ、あの頃とは違うんだって感じることができて、それから…セフンさんと一緒に寝れるようになってから、22時には寝れるようになった。

1人で寝れない、なんてわがままを言いながらも、本当はきっと、それが分かっているんだ、セフンさんには。

なのに…また、嫌な夢を見るなんて。

隣には、いつものようにセフンさんがすやすやと眠っていた。

セフンさんの香り…か…。

最初より、だいぶ薄く感じるようになってしまった。

きっと、慣れてしまったのと、一緒にいる時間が長くなって、自分もその香りを取り込んでいるから、かもしれない。

『…うん、ありがと。でもベッキョニヒョンもAを幸せにしてくれると思うよ』

セフンさんが、私をそうやって突き放すから…セフンさんが離れてしまうかもしれないという、不安…それで、嫌な夢を見た、っていうのも、あるのかも…。

「…いやです」

寝ているセフンさんに、ぎゅっとしがみつく。

セフンさんがいないと、また嫌な夢を見てしまう。

あの頃の…愛されていなかった、自分…。

すうっと、セフンさんの香りを精いっぱい鼻から吸った。

あと2時間後に起きなきゃいけない。

こんな中途半端な時間に起きるなんて初めてで、二度寝したら起きれるか怖くて。

そのまま、セフンさんの、少し口が空いて気の抜けるような寝顔を眺める…

セフンさんといると…人を愛するっていうのが何なのか、分かる気がするんです。

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