リナリアに苦悶する 6 (ページ42)

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291.魔法を解いてページ42

＜ベッキョン＞

「…Aちゃんは、セフンに何を相談しに来たの？」

Aちゃんの生い立ちを知って、そう聞いてみたくなった。

『…愛って、なんですか、だって』

「愛…か…」

『母親が4人もの男と結婚したのもあって、そう思ったらしい。母親は愛に飢えてたんじゃないかってさ。でもAは母親に愛されてると思ったことは一度も無いって』

Aちゃんは愛、されたことが無かった…。

Aちゃんも、愛に飢えていたのだろうか。

『1度目に来た時はそういう相談だったよ。2度目に来た時は…バイト先が潰れて、助けてください、って言ってここに来たの。バイト先なんていくらでもあるはずなのにね』

なるほど、そうしてそのままセフンの相談屋で働くことになった、ってとこか…。

「なんでAちゃんを受け入れたの？」

『うーん…最初は、同情。俺も親からの愛を受けて育たなかったから』

「セフンも…？」

せ、セフンの生い立ち…か…そっちのほうが、壮絶そうだな。

『うん。だからこそだよ。ベッキョニヒョンなら、普通の愛情をAにあげることができるんじゃないかって思って。愛を教えられず育って…恋愛もできない俺よりも』

俺は、眉間を摘んで、うーん、と唸る。

複雑な生い立ちの2人だからこそ通じるものもあると思うんだけどな…。

それに、お前は恋愛できないわけじゃないかもしれないんだし…。

とはいえもちろん。

Aちゃんのそんな生い立ちを知って…俺が、目一杯の、無償の愛を注いであげたくなったのも事実である。

あんなに純粋で綺麗で可愛いAちゃんを、俺が。

『魔法を解いてあげてよ、ベッキョニヒョン』

「へ？」

『俺しか見れてない魔法を解いて、Aを解放してあげて』

電話越しだから、セフンの表情はわからない。

「…なんでそんなに俺に期待するんだよ。セフンこそ、Aちゃんには俺しかないって思ってない？」

『え、じゃあ他の男にAちゃんを任せて良いの？』

「だ、ダメに決まってるだろ！！！」

『ほら〜』

そう言われるとそうですよ。俺は…俺が、Aちゃんを幸せにしたい。

「…やってみるよ」

『やっと本気出すの？』

「やっとって…あ、あぁ、そうですよ！」

決して今まで手を抜いていたわけではないけど…Aちゃんがまだ俺のものにならないのは本気出してなかったからと言うことにしておこう！！！

俺は、A姫の魔法を解く、勇者になる。

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