リナリアに苦悶する 6 (ページ32)

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281.専門家ページ32

＜ベッキョン＞

2杯目のコーヒーを頼んでから、仕事に戻って黙々と作業をした。

Aちゃんがいないから、逆に集中できて捗った。

まぁ、Aちゃんがいても、Aちゃんをエネルギーに頑張れるんだけどね！

どれほど作業をしていたか。

目の前で振られる手にハッとして、ヘッドホンを外す。

「お疲れ様。もうすぐ昼の営業終わるよ」

ミンソギヒョンがそう言って、カップに温かいコーヒーを入れてくれる。

「ありがとう…そのコーヒー飲んだら帰るよ」

「ベッキョンならゆっくりしていいよ。このコーヒーはサービスだから。好きな子に会えなかった哀れみの意味を込めてね〜」

「…あ、ありがとうございます…なの…？」

悪戯っぽく笑うミンソギヒョンに戸惑いながらありがたくコーヒーをいただく。

すっかりミンソギヒョンは俺のことを気に入ってくれたようだな…と。

「あの人は…知り合い？」

先程、カウンターでミンソギヒョンと話していた人も、まだ席にいることに気づいて聞いてみる。

他のお客さんたちはもういなくなっているけど、その人はゆっくりコーヒーを飲んでいた。

「うん、そう…あ、ベッキョンにも聞いてもらおうかな…」

ミンソギヒョンは、何か考えるように独り言った後、カウンター席に座るその男に声を掛けに行った。

男の人はミンソギヒョンと少し言葉を交わし、こちらに目をやる。

とりあえずさっきのように会釈をすると、ミンソギヒョンと一緒にその人はこちらにやってきた。

「どうも…はじめまして、キムジョンデといいます」

男の人はそう名乗りながら、わざわざ名刺を渡してきた。

「ジョンデ、さん…どうも、俺はビョンベッキョンです。今名刺とか持ってないんですけど…」

「ベッキョンは…なんだっけ、ゲームプログラマーだっけ？」

「うん。ジョンデ、さんは…」

名刺に書かれた肩書きを確認する。

〇〇大学社会学部社会学科准教授…俺でも知ってる有名な大学だ。

「すご…」

「あはは、いえ、それほどでも」

柔らかく笑うジョンデさん。

「同い年だからさ、そんなに堅くならず…ジョンデはね、セクシャルマイノリティについて研究してるんだよ」

ミンソギヒョンがそうジョンデを紹介する。

「セクシャル、マイノリティ…」

「うん。思い当たること、あるだろ？」

思い当たること…

『ベッキョニヒョン。俺…女に興奮しないんすよ』

『…へ？』

『アセクシャルって知ってます？』

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