リナリアに苦悶する 6 (ページ31)

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280.今日も今日とてページ31

＜ベッキョン＞

今日も今日とて。

朝9時。

せっせと仕事用のリュックにパソコンやら書類やらを詰め込む。

荷物が用意できたら、洗面台の前に立ち、髪型をチェック、歯もしっかり磨いて、軽く香水を振る。

『Aちゃん、俺、ちょっと傷ついたよ』

『え…私…何か…』

『でも…これで、許してあげる』

昨日2回目のキスをして、呆然としたままのAちゃんを置いて帰った。

そしてまた、今日も俺はAちゃんのバイト先に行く。

会ったら、どんな反応をしてくれるだろうか。

昨日のことを思い出して、照れたような可愛い笑顔を見せてくれるだろうか…

「…いかんいかん」

だらしなく緩む頬をパシッと叩いてから、家を出た…

「残念ながら、Aちゃんは本日シフトがございません。Aちゃん目当てならお引き取りくださいねー」

カフェに着いて早々、どこか面白がってそうなミンソギヒョンにそう言われる…

「…アルバイトだってこと、忘れてた」

「うん、そうだよ。Aちゃんのシフトは火水金のお昼ね。今日は木曜日だから来ないよ。覚えときな」

せっかく開店と同時にAちゃんに会おうとやってきたと言うのに…俺ったら。ドジっ子だなぁ、もう。

「えぇぇ〜！！せっかく来たのにぃ！！！」

「駄々こねないでもらっていい？アラサーの駄々こねはけっこうキツイよ？」

「ミンソギヒョンの言葉の方がキツイですけど」

なんて言葉を交わしつつ、せっかく来たので仕事だけでもしよう、と、端っこの席に座る。

コーヒーを頼んで、仕方なく、仕事に取り掛かった。

「…ふぅ」

一段落ついて、一旦ヘッドホンを外し、一息吐く。

集中しすぎて冷め切ったコーヒーを飲み干し、もう一杯頼むか、とミンソギヒョンを呼ぼうと顔を上げた。

すると、カウンターで、ミンソギヒョンが何やら親しそうにお客さんらしき人と談笑しているのが目に入った。

話を遮るのも悪いな、とそのままなんとなく見ていると、俺の視線に気付いたのか、ミンソギヒョンがこちらにやってきた。

「ごめんごめん、Aちゃんいない日は1人で切り盛りしてるから…新しい注文？」

「うん、コーヒーもう一杯お願いします」

「はーい」

ミンソギヒョンは注文を取り終わると、カウンターに戻っていく。

それを目で追っていると、さっきまでミンソギヒョンと話していた人と目が合ったので、軽く会釈をした。

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