リナリアに苦悶する 6 (ページ23)

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272.噛み合わないページ23

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…なんなの。話が全く噛み合わない。

仮の恋人、って、何のこと？

聞こうとしても聞こうとしても、話を逸らされる。

…でも、勘違いは、してるよね、きっと。

私とベッキョニオッパが、恋人になったって…思ってるよね…？

否定しようとしても、これまた話を逸らされる。あらゆる手段で。

…まぁ、私が単純だから、気を逸らされやすいんだと思うんですけど…。

「…あの、違うんです」

「ねぇA、小説読ませてよ」

「し、小説…？」

今度は、なんだ？

「ほら、なんかさ、この前読んで感動してたやつ。男女関係のもつれが引き起こしたミステリー小説」

「あぁ…あれですか…」

なぜ急に、とも思ったけど、大好きなセフンさんに読みたいと言われたらしょうがない。持って来ますよ。

「…これ、ですよね？」

「そーそー、こ、れ…」

私が小説を渡すと、セフンさんは何かハッとしたような表情をして。

「…キムジョンイン…」

と、突然その名前を呟いた。

そうだ、これは彼にもらったもの…

私に好意を寄せていただいてるのに、セフンさんやベッキョニオッパに精一杯で、でもお断りするのも心苦しくて、結局ほったらかし状態になっている…あぁ、思い出すと申し訳ない。

魅力的な方だし、きちんとお断りして、次の恋に踏み出してもらった方がいいのでは…。

「ね、A、これ買ったキムジョンインのお店、どこにある？」

そう言ってセフンさんがシャツの中から引っ張ったのは、私が誕生日プレゼントにあげた、ネックレス…

わぁ、付けてくれてるんだ、ちゃんと…

「ねぇ、Aちゃん？」

「え、あ、えーっと…」

ジョンインさんのお店、か…。

「たしか…」

私はスマホを取り出して、マップでセフンさんに説明する…

って、何で急に！？あ、また、話逸らすために…！？

「ん、ありがと。ちょっと行ってくる」

「え、なんでですか！？」

「んー、まぁ…依頼人のアフターケアも大事だからね」

「そ、それなら私も行きますよ！で、その前に話が、」

「来なくていい。俺だけで十分」

セフンさんは語気を強めて言ってくる。

…なんで私が行っちゃいけないの…ジョンインさんとのけじめもつけなきゃいけないのに。

「じゃあその前にちょっと、」

ベッキョニオッパとの関係性の訂正をっ！！！

「帰って来てから聞くね〜」

「ちょっ！！」

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