リナリアに苦悶する 6 (ページ22)

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271.真の恋人ページ22

＜セフン＞

帰りの遅いAが、心配になって。

家を出て階段の手すりにもたれつつきょろきょろと見回してみたら。

向こうから、ベッキョニヒョンに手を引かれて歩いてくるAが見えた。

若干、ベッキョニヒョンの方が早足でAが置いてかれそうなことに違和感を覚えつつ…

あぁ、うまく行ったのかな、って。

『だから、そのまま。仮の恋人になっていいよ、Aと。ベッキョニヒョン』

さすが恋愛マスターベッキョニヒョン。展開が早い。

なんて思いながら、自分の心が騒ついているのを無視しつう、そのまま2人を観察していた。

先にAの方が俺に気づいて目が合って、びっくりしたような表情をした。可愛かった。

何を話しているのかは聞こえなかったけど、2人は家の前で立ち止まった。

そして、何を話しているんだろうと思っていたら。

ベッキョニヒョンが、Aの頬に手を添えて、Aにキスをした。

…そこまで、大胆に俺にアピールするとは、思わなかった。

呆然とするAをよそに、こちらを見てニヤリと笑うベッキョニヒョン。

俺は、自分がどういう顔をしているのか、分からなかった。

ベッキョニヒョンはその後、Aに手を振って、元来た方向へ帰っていった。

…まったく。

俺は階段を降りて、立ち尽くすAを迎えに行った。

そして、今に至る。

「仮だもんね」

「…何が、ですか？」

「仮の、恋人だもんね」

「…はぇ？」

Aは、聞いたこともないような声を出した。

…なんだ、ベッキョニヒョン、ちゃんと説明しなかったのか。

まぁそうか。仮の、なんて言われても、どうして、ってなるもんな。

その仮、は、俺のAへの気持ちが恋愛かそうでないかがはっきりするまでのものだから、Aに説明もしづらいだろうし。

…いや、そもそも意味分かんないし、仮、って。

ジュンミョニヒョン発案だからな、ジュンミョニヒョンが意味分かんないんだ。

…なんて。

冷静に思考を巡らすことで…

自分の心から、意識を逸らしている。

…そうか。ベッキョニヒョンとAが、仮の恋人になったか。

それなら、急がなきゃいけないな。

俺のAへの気持ちが何なのか、はっきりさせないと。

「…あの、セフンさん」

「んー？」

「仮の恋人って、何のことですか…？」

「あー、いいよ、Aは知らなくて」

ベッキョニヒョンを、”真の”恋人だと思っていれば…

…ズキッ

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