リナリアに苦悶する 6 (ページ15)

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264.ギャップのある客ページ15

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「…あの、ご注文を」

「店員さんで」

「…はい？」

「店員さんが欲しいです、僕！」

「…えぇっと…」

「あ、本気で困るってことは、意識してるってことだな〜？」

「君が面倒臭い絡みをするからだよベッキョン」

まだ開店したばかりでお客さんがベッキョニオッパ以外に居ないからと困らせてくるベッキョニオッパと、それを止めてくれるミンソギオッパ。

「ちょっとミンソギヒョン邪魔しないでくださいよ！今Aちゃんを口説いてるんですから！」

「俺の店でやるなよ…それに、この子仕事中だから」

「あー、そっかぁ…じゃあ俺も仕事やろっと」

いつもの子どもっぽいベッキョニオッパならもう少し食い下がりそうなものを、今日は素直に引いて、カバンから仕事道具であろうパソコンやら書類やらを取り出して机に並べた。

「あ、コーヒーください、店員さん！砂糖とミルクも付けて！砂糖ちょっと多めで！」

「か、かしこまりました…」

にこっと子犬のような笑みを浮かべて注文してくるベッキョニオッパ。

「それと…ちょっと集中するから、持ってきてくれても気づかないかも。気にせず置いてくれていいからね。ごめんね」

「あ、はい…」

かと思えば大人表情になって、優しく微笑まれる…

こ、この人…たぶん、私のツボを分かっている…。

ベッキョニオッパは私の返事に頷くと、高そうなヘッドホンを付けてパソコンに向き合った。

私はそっとその場を離れ、カウンターに向かう。

「ミンソギオッパ、コーヒー１つお願いします…」

「はーい…なんでそんなコソコソ声？」

「あ、いえ、ベッキョニオッパが集中してるみたいなので、つい…」

チラリと目をやると、やはり真剣な表情でパソコンと書類を睨めっこするベッキョニオッパ…

「…Aちゃーん」

「あ、はい！」

「今、目がとろんとしてたよ」

「…えっ！？嘘っ！？！？」

「あははっ！まぁしょうがないよね、Aちゃんはベッキョンが好きだもんね」

「あ、え、いや、いやじゃなくて、でも、その、」

「案外単純なんだね、Aちゃん。ギャップに弱いなんてさ」

ミンソギオッパはコーヒーを淹れながら揶揄うように言う。

「単純って…やめてくださいよ…バカにしてます？」

「あぁ、ごめん。違うよ。Aちゃんは素直でまっすぐで二面性が無いでしょ？」

「…でしょ、と、言われましても」

「だから、ベッキョンに恋、したんでしょ」

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