リナリアに苦悶する 6 (ページ6)

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255.お茶をこぼした先ページ6

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『…それが、割と全てだと思うよ』

『全て…？』

『うん。セフンの悩みの全て』

どういう意味だろう。

聞きたかったけど、あの後お客さんが入ってきちゃって、聞くことができずに消化不良。

ずっと、頭の中をぐるぐる思考が巡りながら、接客をする。

注文のティーセットを受け取って、テーブルに運ぶ。

その間にも、めぐる思考。

『好きっていう気持ちを、あんまり気軽に口に出したくないって言ったんです、私』

『うん』

『そしたら、好きってそういうものなんだね、って。その気持ちが分からない、って…分かったら、苦労してないって…』

…それって…

ビシャッ！！

「あつっ…！」

「…え？」

ハッと我に帰って声のした方を見ると…

「あっ、すみません！！」

運んでいたティーセットがお盆から溢れ、1人の男性のお客さんのスーツを汚していた。

「ごめんなさい！今タオル持ってきます！！」

「あ、いえいえ。ハンカチがあるので大丈夫ですよ」

にっこりと、本当に、にっこり、という効果音がつきそうな優しい笑顔を向けてくれるお客さん。

「いえ、申し訳ないので…少々お待ちください！」

私ってば…バイト中なのにボーッとして、情けない。

お客さんの優しさに甘えちゃダメだ。

「なんかあった？Aちゃん」

私の慌てた声を聞いたのか、カウンターの奥からひょこっと顔を出すミンソギオッパ。

「オッパ、ごめんなさい…お茶をお客さんにかけちゃいまして…」

「そりゃ大変だ」

ミンソギオッパは慌ててタオルを持ってフロアに出てくる。

「どのお客さん？」

「あ、あそこの、奥の…」

「奥…あの方ね…って、あれ」

「ん？」

ミンソギオッパは、私が紅茶をかけた男性に目を留めた。

「え…もしかして、知り合いとかですか…？」

なんとなくそんな感じがして、ミンソギオッパとお客さんを見比べていると、お客さんが顔をこちらに向けて。

「あ、ミンソギヒョン、久しぶり！」

そう言って、またさわやかな笑顔でこちらに手を振った。

やっぱり、知り合いだったのか。

「ジョンデ…！うわぁ、久しぶりだな！」

ミンソギヒョンは嬉しそうに、お客さんをジョンデ、と呼んで駆け寄る。

私もその後をついていった。

「元気にしてたか？」

「うん、ヒョンこそ！風の噂でヒョンがここのお店やってるの知ってさ、来てみたんだ！」

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