8.泊まっていきます？ ページ9
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「…あの。そろそろ帰ってもらっていいですか、ベッキョンさん」
セフンさんは私から視線をベッキョンさんに移して言う。
「だ、だから…言ったじゃん？家、無いんだってば…」
「いや、家自体はあるでしょ」
「いやいやいや！！無理！！今から帰ったら、すっごい気まずくなるって！！」
「じゃあ適当にその辺のホテルとか友人の家にでも泊まってください」
「…それ、思ったんだけどさ」
ベッキョンさんは、言いづらそうにしながら、両手を広げた。
「俺…カバン、どっかにやっちゃた！」
「え！？」
確かに、ベッキョンさんは身一つ…酔っ払ってここに来たって言ってたし、その途中で、無くしちゃったってこと…！？
「ポケットの中も何も無いしさ…スマホも財布も無くて誰にも連絡も取れないし、どこで飲んでたかも覚えてないし…あぁ、どうしよう」
「はぁ…28にもなって何やってんだか…」
セフンさんは呆れたような声を出す…私も、同じ気持ち。
こういう所かな、彼女さんに振られた理由…。
「相談屋でしょ！？相談乗ってくれるんでしょ！？なんとかしてよ！」
「なんとかって言われても…帰ってくださいとしか言いようがないんですけど」
「そんなぁ！！帰りたくないよ…」
そう言って頭を抱えるベッキョンさんは、それでもなんだかほっとけない感じがある…。
「あ、あの…せめて、今夜だけでも、泊まっていきますか…？」
「え、いいの！？」
「ちょ、A！何勝手なこと言ってんの！？」
ぱあっと顔を明るくするベッキョンさんと、慌てるセフンさん。
「じゃあタクシー代とかホテル代とか払ってあげられるんですか？」
「…捻出して」
「無理です！昼間散財したのは誰ですか！？」
「無理やり帰らせればいいでしょ！放り出そう！」
「困ってる人にそんなことできません！」
「俺だって困ってる！嫌だ！泊めたくない！」
わーわーと駄々をこねるセフンさん…こうなってしまったら、いつもは言うこと聞いてくれないんだけど。
「ねぇ、セフンくん、耳貸して」
「え？」
ベッキョンさんは、セフンさんの耳に顔を近づけて…何やら、こそこそと耳打ちした。
すると、びっくりしたようにセフンさんはベッキョンさんを見る。
「お、ビンゴ！？よっしゃ！」
…何を言ったんだろう。
「大丈夫！ちゃんと後でお金は払うから、ここに泊めさせてください、相談屋さん！」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月6日 22時
