43.世知辛ぇ ページ44
＜ベッキョン＞
そんなわけで、人権を捨ててまで聞いたのだ…ふぅ、後悔。
セフンに女として見てもらいたくて、セフン一筋なAちゃん。
女に興奮しないし、自分より他の人の方がAちゃんを幸せにできるなら、その人に譲ってあげたいセフン…。
「世知辛ぇ…世知辛ぇなぁ…！！」
「…何やってんの、ベッキョニ」
土下座した状態のままでいると、頭上から降ってくる声。
「…チャニョラ〜！！世の中上手くいかないなぁ！！」
「…なに、また振られたの？」
無駄にデカい図体で見下ろしてくる彼…パクチャニョル。
家なき子だった俺を引き取ってくれて、シェアルームを始めた親友である。
「違うよ…今は人様の恋愛に首突っ込んでんのー」
「いや、自分の心配しろよ！」
「お前もな！」
ガハハ、と笑い合う、馬の合う友達だ。
「で、その子って、もしかして前言ってた子？」
「前言ってた？」
「うん。好きな人に一筋で応援したくなる、って言ってなかったっけ？」
あー…確かAちゃんのこと、チャニョルに話したんだっけ。
「うん。まぁねー」
「可愛いの？その子」
「うん、可愛いよー。背が低くて童顔で、料理上手で掃除好きで働き者で気も使える優しい子！」
「性格までは聞いてないんだけどな…。あ、もしかしてベッキョン、好きなのか！？」
「え！？」
いやいや、Aちゃんを恋愛的に見たことなんか…
いいお嫁さんになるかも、とは思ったけどさ…しかも可愛いなとは思ったけど…
本人は、セフン一筋だし。
「ううん、俺のことなんて見てないよ、彼女は」
「いや、その子はどうか、じゃなくて、ベッキョンがどう思うかを聞いてるんだけど」
「いや、だからAちゃんがセフン一筋なのを見ると、恋愛的に見れないんだよ」
「…A…？」
チャニョルはフリーズしたような顔をする。
「え、何、どうしたの？」
「いや…名前が一緒なだけだよ、俺の知り合いと」
「ふーん…案外世間って狭いし、本人なんじゃなーい？」
そう、軽い気持ちで言ってみる。
「…歳は、どのくらいだって？」
「23だってさ」
チャニョルは、驚いたような顔をする。
「歳も一緒だ…え、まさか、マジでA！？」
「…どういう関係なの？チャニョラが思い浮かべる子とは」
「俺の妹みたいな存在だったんだよ。俺が高校卒業してからは、めっきり会わなくなったけどさ」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月6日 22時
