リナリアに苦悶する (ページ42)

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41.セフンの悩みページ42

＜ベッキョン＞

…さすがにドストレートすぎた。

スマホを耳に当てて、ついフローリングに土下座してしまっていると、プツリと耳元から電話が切れる音が聞こえた。

「あー！嫌われた！！Aちゃんに嫌われた！！！」

パタリとフローリングに倒れ込む。

事の発端はといえば。

『あの…セフンは、Aちゃんのこと、どう思ってるの…？』

『…どうって？』

『えっと…好き…？』

『もちろん』

『…それは、恋愛的に？』

『…あの。ベッキョン、さん』

『は、はい、なんでしょう…』

『ベッキョン、さんって…恋愛経験、豊富だったり、します…？』

『えっと…それなりに…？』

『あの…俺に、恋愛について教えてもらっても…？』

あの夜に、セフンから相談されたことである。

『…あの、実は、ベッキョンさ…ベッキョニヒョン。俺…

女に興奮しないんですよ』

『…へ？』

『アセクシャルって知ってます？』

『…アセクシャル…？』

それは、初めて聞く言葉だった。

『他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない人のことです』

…そ、そんな人が、いるのか…と、驚いた。

男なんて、特に若い内なんて性欲の塊で、女の裸見りゃ誰だって興奮する～、なんて思い込んでたんだけど。

『俺、それっぽくて。適当に告白された人と付き合ってもみたし、そういうこともした事あるけど、結局たたなくて別れるし。恋愛感情、なんてのが理解できないんすよねー』

『…は、はぁ…』

俺には分からなさすぎて、別次元の話のように感じる…。

『恋愛には興味無いって言ったの、そのせいなんですけど。でも…その…Aは、なんか違う気がして』

『…と、いうと？』

『これが、恋愛感情なのかもって、初めて思うことができたんですよ。でも…性欲は湧かなくて。一緒に寝てみたり、お風呂入ってみたりしてるんですけど…やっぱダメなんだよなー。一度も興奮しない』

…なるほど。Aに対して性的に興奮するかが気になって、一緒にお風呂入ったり寝たりしてるってことか…。

『…俺は、Aに幸せになってほしいんです』

セフンは噛み締めるようにポツリと言った。

『正直…Aの気持ちには、気づいてますよ』

『え…』

『気づかないフリを、してるだけで』

『どう、して…』

『俺がAを幸せにできる自信が、ないからです！』

セフンは、そう自信満々そうに言った。

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