11.あれをご所望 ページ12
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奥の部屋のドアが少しだけ開いていて、ジトッとした目でこちらを見るセフンさんがその隙間からこちらを覗いていて。
私と目が合った瞬間に、バタン！と乱暴に扉を閉めた。
…まったく。構って欲しいんだな、絶対。
「い、行ってあげた方が、いいんじゃないの…？」
「…そう、ですね。ベッキョンさん、狭い所ですけど、自由にお寛ぎください。では」
立ち上がって、奥の部屋に行こうとすると。
「Aちゃん！」
こそこそ声で私の名前を呼ぶベッキョンさん。
「笑顔！忘れないで！」
ベッキョンさんはにっこりと笑って、またつんつんと自分の頬を突く。
「あ…は、はい！」
できる限り笑顔を作って、そのままの顔で、セフンさんのいる奥の部屋に入った。
「セフンさん」
セフンさんは一つだけある大きなベッドに、大きな体を布団で丸ごと包んで、なるべく小さくなるように体を丸めてあちらを向いて横になっていた。
…完全に、拗ねた子ども。
内心呆れつつ…え、笑顔。忘れないように…
「セフンさ〜ん」
ゆさゆさとその大きくて白い物体を揺すると、ひょこっと布団の隙間から顔が出てくる。
「…楽しそうでしたね」
そうとだけ言って、また顔が布団の中に入る。
…何がそんなに気に食わないの。
「はぁ、セフンさん、機嫌直してください」
なるべく口角を上げて…。
「これはよっぽどのことをしないと僕の機嫌は直りませんよ」
そう言われて、引き攣る口元。
…これはどうやら、あれを、ご所望だな…。
「せ、セフンさん」
「…なに」
また布団からひょっこり顔が出てきて、半分ジトッと、半分期待するような目線が送られる。
「お、お風呂、一緒に入るので、機嫌直してください…」
「ほんと！？」
バサァッと布団が蹴散らされ、ベッドの上で膝立ちになったセフンさんの大きな全身が見える。
…セフンさんは、私と一緒にお風呂に入るのが、好きらしいけど…
私にとっては、地獄の時間である。
「…15分後に入ってきてください」
「やったぁ！！Aちゃん大好き！！！」
ころっとご機嫌になり、ぎゅーっと抱き着いてくるセフンさん…ったく、たぶん策士だ、この人は。最初からこのつもりだっただろう。
「離れてください、先行ってますから」
「うん！久しぶりのお風呂〜♪」
鼻歌まじりのセフンさんを背に、とぼとぼと浴室に向かった。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月6日 22時
