1.相談屋 ページ2
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「うぅっ…！！分かってるんです！！”食欲一瞬デブ一生”って…！！！でも、食べちゃうんです！！！」
目の前のぽっちゃりとした女の人は、事務所に入ってきて座るなり、泣きながらそう言った。
「…一生は、一瞬の半永久的な積み重ねでしょ」
対して、私の隣でそう平然と言い放つのは…
白い肌にキリッとした眉毛、すうっと筋の通った立派な鼻を持つ彫刻のような顔立ちで、それに見合うがっちりとしたその肩幅を見せつけるかのように腕を組み、その細さと長さを見せつけるかのように脚を組んで、どっかりとソファに座る男の人。
外見の説明が長くなったが、この人こそ、私の雇い主である。
「その食べてる一瞬は幸せなんでしょ。その一瞬を大切にしないことには、一生は幸せにならない」
冷たい口調に聞こえるかもしれないけど…彼の言葉は、いつも的を射ている。
「な、なるほど…」
女の人は、納得したように声を漏らす。
「自分をダメな人間だなんて思わないこと。少なくとも、あなたはこーんな怪しい所に1人で入って来るほどの勇気のある人なんだから」
これは、彼の常套句だ。
「は、はい…！」
女の人は、途端にパァッと明るい顔になって立ち上がる。
「ありがとうございます！もう少し…この体型と向き合ってみます！お世話になりました！」
「はーい。A、あとはよろしく」
「はい！」
仕事をしている時の彼は、最高にかっこいい。
話を終えて、奥の部屋に入っていく後ろ姿まで”は”、かっこいい。
「では…10,000円になります」
「はい！本当にありがとうございました！何かあったらまた来ますね！」
「ぜひ！お待ちしてます！」
私は笑顔で女の人を見送る。
バタン、と扉が閉まり…もらった一万円札を見つめる。
ちょっと相談に乗るだけで10,000円…絶対、ぼったくりなんだけど。
ここには、よっぽど精神的に追い込まれて来る人が多い。
さっき彼が言ったように、こんな、”相談屋”なんて怪しい所に入ってくるような人たちだ。
藁にも縋る想いなのだろうから、そんなこと考える余裕もないんだろうな。
この価格設定にしないと…実際問題、やっていけない。お客さん、全然来ないし。
「A〜？終わったんなら早く来てよ〜」
奥の部屋から彼の声が聞こえる…
その声は、さっきまでの冷たい口調ではなく…
私の、嫌いな声だ。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月6日 22時
