293.温かさを知る ページ50
＜スホ＞
「…遅いな」
「うん…」
「迷子になったのかなー」
昼頃に出たのに、もうすっかり日は暮れて…
ギョンスは晩ご飯の用意を始めた。
俺とレイとベッキョンは、2人で地下道への扉の前で、待機していた。
「そろそろ晩ご飯の時間だな」
俺がそう言った時、ガチャ、とAの部屋のドアが開き、セフンとAが出てきた。
「あ、スホヒョン、レイヒョン、ベッキョニヒョン…まだいたの？」
「うん、心配で…Aは体調、どう？」
「ちょっとだるいけど…ご飯は食べたくて」
「そうか…あんまり無理はするなよ」
「うん、ありがと、スホ！」
「A、寝てていいのにーベッキョンくんに会いにきてくれたのー？」
「ううん！」
「全力で否定されたけど返事されたから良い！」
ベッキョンの返しにみんなが笑っていると。
「しっ！」
カツカツ、と、開いた地下道への扉から音がした。
「スホヒョン？なにか聞こえる？」
俺は頷いて、耳を澄ます。
足音が…4人？
チャニョルとジョンデとジョンインと…誰だ…？
「もうちょっとだから頑張って、母さん！」
「うん、わかってる…」
チャニョルの声、だった。
そして、その次は女の人の、声…
「チャニョルの、母親…？」
「え、スホヒョン、それって…」
心臓がドクドクと高鳴る。
みんなが、シンとする。
カツカツ、という足音はどんどん大きくなっていって。
ドクドク、という鼓動もどんどん大きくなっている。
「光が見えた！」
ジョンインの声。
「ジョンイナ！」
「ちょ、A、走るな…」
Aが扉を、覗く。
「チャニョルー！ジョンデー！ジョンイナー！」
「Aの声だ！」
「え、私？」
「いや…母さんじゃなくて…」
ひょこっ、と、チャニョルの顔が、見えた。
「帰ってきた〜！！！」
ベッキョンが大きな声ではしゃぎ。
「ただいま…あ、スホヒョン…」
チャニョルが扉から出て、床に降り立つ。
「スホヒョンに、会わせたい人がいるんだ」
今の気持ち？
不思議と、心臓の鼓動は収まっている。
人間、緊張しすぎると、逆に落ち着くんだな。
チャニョルが手を伸ばし、その人を支える。
「あなたが、ジュンミョンでしょ？」
その人は俺の目を真っ直ぐに見て、微笑んだ。
不思議と、心が…温かいもので、満たされた。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年8月8日 21時
