桔梗を探して 6 (ページ41)

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284.完全に悪い人ページ41

＜チャニョル＞

「み、ミンソクさんってさ…何者？」

「あー…えっと、天才化学者だよ、彼は」

天才化学者…まぁ色々な薬を作ってたし…あの実験室みたいなところを見たから分かるけど…

「こ、このお金は…どこから…」

ベッキョンみたいに麻薬を作ってたり…！？

「ミンソギヒョンが取った数々の特許の使用料と…あと不動産何個か持ってるらしいから、賃貸料かな」

「へ、へぇ…」

不労所得ってやつか…汚いお金じゃなくて安心した…。

「良い方向に使えば、ミンソギヒョン、たくさんの人を救えるのに…」

ジョンインが呟く。

「Aが記憶喪失になったのは、ミンソギヒョンがそういう薬を作って飲ませたんじゃないかって…俺、思ってたんです…」

記憶喪失になる、薬…？

「ミンソギヒョンなら、作れそうだな…」

そんなものが、あるのか…。

俺の母さんが記憶喪失になってしまったから…それの、再現をするために、Aを…？

「そんな酷いことをされたかもしれないのに、Aはミンソギヒョンのことを愛したいんだそうです」

ジョンイナは立ち上がる。

「…ミンソギヒョンが病気だと知った時…俺は、すごく複雑でした。執着の薬を飲まされて、冷遇されて…散々苦しめられた。なのに…それでも、悲しいって気持ちがあったんです…」

「ジョンイナ…」

「…俺は、そこまでミンソギヒョンに苦しめられてない方だと思う。だからかもしれないけど…思うんだ」

ジョンデも立ち上がる。

「ミンソギヒョンは、俺の復讐心を利用した。人の心を利用するのが上手いんだ、あの人は。でも…それだけ、俺のことを理解していたのかなって…俺の心に、寄り添っていたのかなって、思ったりも、するんだ…」

人の心を利用するのが上手い、ということは…それだけ、その人に向き合っている、ということ…？

「…俺も、そう思うから、憎みきれないんですよ…」

ジョンイナは顔を歪めた。

「そう、なんだ…」

みんな、長い間ミンソクさんと接する中で…それを、なんとなく感じ取っていたのかな…。

「ごめんなさい、暗い雰囲気にさせちゃいました…行きましょう！」

「…うん、そうだね」

ミンソクさんは、悪い人なのかな。

完全に悪い人、なんて…いないと、俺は思う。

…完全に良い人、も、いないけど。

俺たちは暗い暗い地下道を、ただ歩き続けた。

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