桔梗を探して 6 (ページ37)

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280.褒め上手ページ37

＜ギョンス＞

「そうそう…それで、左手は猫の手」

「ねこの手って…どんなの？」

「あぁ、そっか…俺の真似して。こう」

「こう…」

「そうそう。で、包丁を真っ直ぐに入れる」

「まっすぐ…切れた！！」

パチパチパチパチ、と厨房の入り口から聞こえる。

「すご！初めてAが包丁で人参を切ったよ！」

「今日は記念日だ」

「あ、なんか…写真とか、撮ったけばよかった…」

「どーでもいいから早くAの手作りカレー食べてぇー…」

レイヒョン、スホヒョン、セフナ、ベッキョン。

正直…

「わわ、めっちゃギョンス睨んでる。相変わらず怖っ！」

「ベッキョン…だけじゃなくて…はぁ…」

めちゃくちゃ気が散る。邪魔だ。

でもみんなAのことを愛してるから、心配してるんだろう。

だからあんまり強く出て行け、とは言わないけどさ。

「みんな、静かに！ギョンスの邪魔しないで！」

「「「「はーい…」」」」

あぁ、俺が言うよりAに言ってもらった方が早い。

Aは…みんなに愛されたいと思っていたから、みんなのことをよく知っている。

どういうことでそれぞれが喜ぶのか、とか、逆に悲しむのか、とか…

もしかしたら…ミンソギヒョンも…

「ギョンス先生？続きお願いします！」

「あ、あぁ、ごめん…えっと、次はね、」

Aは、本当に料理をしたことがないから…一から教えながらで、いつもの倍以上時間がかかった。

「あとは…もう少しとろみが出てきたら、完成だよ」

「とろみ…」

「えっと…おたまですくってみて」

「これが、おたま？」

「そうそう。それで…スプーンみたいにすくってみて」

「こう？」

「うん！今はルーがおたまからすぐに、サラサラと落ちるでしょ？このスピードが落ちてきて…ルーたちが落ちたくなさそうにしてきたら、完成だよ」

「なるほどー！ギョンスわかりやすい！」

「そ、そう…？良かった…はは…」

…普通に照れる。

俺にとって料理はアイデンティティだから。

Aもそれが分かって、褒めてくれる。Aは褒め上手だ。

「あ、こんくらい？ルーが落ちたくないって言ってる！」

「うん。そんくらいで火を止めよう」

「火を止める…できた！」

「よし、完成だよ」

「やったー！！」

パチパチパチパチ

A過保護三人衆プラスベッキョンによるスタンディングオーベーションが厨房に送られた。

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