274.信じてるからね ページ31
＜チャニョル＞
「…ううん。いいんだよ、A」
ぎゅっと、抱き締める。
「俺よりも、お腹の子を、愛してあげてほしい」
「チャ、ニョル…」
「他人が今の話を聞いたら、色々思うことがあるかもしれないし、批判されるかもしれない。望んで宿した子じゃないのか、とか…」
強く、でも、彼女が壊れないように、優しく。
「他人の言葉なんか、関係ないよ。愛する人は、周りなんか気にせず、真っ直ぐにその人を愛してあげられるんだ。Aは、それができる人だと…俺は、信じてる」
「ちゃにょる…」
「俺は、信じるよ。Aが、子どもを真っ直ぐに愛すること、セフンが、Aを、幸せにすること」
「っ…」
「俺は、信じてるからね、A」
「うんっ…」
「そばにいることだけが、愛じゃないよ。俺にとってのAへの愛は…信じること、だからさ」
Aは、俺の分まで涙を流してくれた。
俺まで泣いちゃったら…いや、俺は、泣きたく、なかった。
ただ彼女の震える体を抱き締めた。
「チャニョルも、幸せに、なるって…約束、して…」
「っ…」
泣きたく、なかった、のに…。
「俺の、心配、してくれるのっ…？」
まだ、Aは人に良い顔を…いや、違うな。
「私が、チャニョルに、幸せに、なってほしいの」
もう、大丈夫だね。
「…うん。絶対、なるよ」
「絶対？」
「うん。信じて」
「…うん、信じる」
「約束、だよ」
「うん、約束」
「誓いのキス、してもいい？」
「…してもいい、じゃないでしょ」
「…したい」
「私も」
俺たちは、口づけを交わす。
何度も、何度も。
これが、最後だと、知っているから。
短い間だったけど。
君を、愛したという事実は、変わらない。
ほら、変わらない愛は、あるよ。
どのくらい、唇を重ねていただろうか。
そっと、名残惜しく…2人の唇は、離れた。
そのままおでこをくっつける。
「A、愛してるよ」
「チャニョル、私も、愛してる」
ふふっ、と笑い合って、そっと、顔を離した。
「セフンのことは？」
「もちろん！セフナは私のこと、幸せにしてくれるよ」
「そっか。ならよかった。セフンなら…安心してAを任せられる」
俺たちは顔を合わせて、微笑みあった。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年8月8日 21時
