桔梗を探して 6 (ページ23)

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266.フィルター越しのあの人ページ23

＜スホ＞

「はぁ…知ってるよ。お互い本名は過去に置いたんだよね」

レイは壁にもたれた。

「なぁ、レイ。覚えてないのか、二階の廊下と一階の廊下」

「…覚えてるよ。Aがどっか行ったと思って探してたら、スホヒョンと自由研究してたんだから」

「嫉妬したのか」

「…えぇ、そうですよ。俺に隠れてこっそりAはスホヒョンのところに行くんだから…」

「はは…」

『レイヒョン…よくスホヒョンに嫉妬してたよ。俺に内緒でAがスホのとこに行ってるって。あのいつも落ち着いてるレイヒョンがさ、Aがスホヒョンのとこに行くと、ちょっとイライラすんの！』

「俺は…お前に対して、勘違いをしていたらしい。人間くさいところもあったんだな。18年間もそれに気づかなかったなんて」

俺も、レイの横に並んで壁に背をもたれた。

「…18年、気づかないことがあるなら…ずっとミンソギヒョンの病気を気づかなかったのも、あり得ることだったのか」

レイが呟く。

「思い込みや、先入観。それらのフィルターは1度形成されると、付き纏って離れない。疑うこともない。レイ、お前はAに、あの人は簡単に死ぬような人じゃない、と言ったな」

『A、ミンソギヒョンは簡単に死ぬような人じゃないからほっといても大丈夫』

「確かに。俺も、フィルター越しでしか、ミンソギヒョンを見れてなかったんだね」

「…俺もだよ」

1年前。

『ねぇスホ…ミンソギオッパ、最近調子悪そう…』

『…そうか？元気だぞ、あの人は』

『でも…顔色悪いし、食べるスピードも遅くなった…病気なのかな…』

『あの人が病気になるわけがない。しぶとく生きるさ』

『でも…』

Aがやけに心配するので、俺はこっそりAがあの人を部屋から遠ざけている間に、あの人の部屋を探った。

すると。

『診断書…？』

そこには、あの人が大腸がんであることが書かれていた。

Aの勘は…当たっていた。

しかも、余命宣告まで。

それから調達係のセフンに本を頼んで…といってもセフンにバレるのは困るから、英語の本しか頼めなかったが。

『c,o,l…なにこれ、読めないんだけど』

『俺の過去に関係する本だ。いいから買ってこい』

『ふーん…分かったよ』

そう嘘をついて誤魔化した。

セフンは人の過去に興味がない…セフンには過去、というものが無いからな。

彼にとって、この家が人生の全てなんだ。

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