桔梗を探して 6 (ページ22)

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265.名前ページ22

＜スホ＞

「…なぁ、レイ、」

「無いねー扉。そんな簡単に見つかるわけないよねー」

「俺、心当たりが、」

「カラクリ屋敷だからねー、この家。遊び心満載！」

「覚えてるか、二階の廊下、」

「あー、ここじゃないなぁ。でも地下道っていうくらいだから一階に、」

「チャンイーシン！！！」

本名を叫ぶと、レイはビクッと体を震わせて動きを止めた。

「俺の話を聞け」

「…なんで急に本名言ったの。怖かった…」

コイツは、7歳まで住んでいた家で不遇だったらしい。

愛人の子だったんだとか。

それで、何度も怒鳴られるうち…”イーシン”という名前を呼ぶだけで怯えるようになったそうだ。

だからあの人がレイ、という名前をつけてあげたんだと。

俺が来たばかりの頃は、得意げにそれを言っていた。

『俺の本名、チャンイーシンっていうんだ。でもね、ミンソギヒョンが新しい名前を付けてくれたんだよ…それが、レイなの！かっこいいよね！』

レイは…あの人に懐いているようだった。

それがますます気に食わなかった。

こんな他人の子を可愛がって、新しい名前もあげて…

俺のジュンミョンという名前は、捨てられたのに。

だから、レイがあの人に歯向かったと聞いた時は驚いた。

『レイ。Aを抱くのを、拒否したって？』

『うん。Aは俺の妹のような存在だ。抱くことなんて、できない』

『あの人が望んでることなのに？』

『…Aとミンソギヒョンなら…Aを、選ぶよ』

苦しそうにそう言ったのを見て…さらに腹が立った。

俺はその2択すら、与えられない。

俺はジュンミョンという名前も無くしたし、Aとあの人のどちらかを選ぶ資格すら無い。

…でも。

『いいか、スホ！俺もお前が嫌いだ！せっかく一生懸命努力して、いっぱい知識を得たり自分なりにAを助けようとしたりしてるのに、自分に無い物ばかりを見て劣等感をわざわざ抱いて自分の価値を下げようとするお前が、大嫌いだ！』

今なら、コイツを…レイを、憎いとは思わない。

『謙虚で、良くない？』

俺にはどうやら謙虚さがあるらしいし。

『う、嬉しいよ、そりゃ！だってこんなに賢くて心強い人の弟だなんて！』

俺は賢くて心強い兄らしい。

『す、スホ、ヒョン…』

バカで真っ直ぐな弟もいるし。

俺は、結構いろいろ持っているらしい。

「なにニヤニヤしてるのキムジュンミョン…」

「ん？いや…俺は、スホだ」

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